吉田鋳造総合研究所
鋳造所長雑文録
2017/06/27◆水曜日のいわきFCと金曜日のいわきFC
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今回はほぼ半分を終えたJFLや地域リーグの展望とかを書くつもり、というか途中まで書いていたんだけど、天皇杯でそれどころじゃなくなってしまった……。

21日は天皇杯2回戦

まず、今季から実施の「2回戦以降は水曜日開催」。アマチュア・チームは仕事の関係で選手が揃わない可能性もある。日程の関係で水曜開催はしょうがないとしても、せめて少しでもアマ側のハードルを下げようという考えはなかったのかな。1回戦をなるべく隣県対決にして2回戦はそのどちらかにJ勢を招いて開催とか、そのどちらかになるべく近いJ勢の会場にするとかね。そりゃアマチュア・チームの中にはクラーケンいわき====ThisIsTheErrorMessege====みたいにどうにでも調整可能(おそらく)なところもあるだろうけど、そんなバケモノばかりじゃない。上記の会場調整をすればアマ側は前泊する必要性はあまりないし、翌日の仕事もそんなに支障を来たさないだろうに……と。ここまで、実は21日の朝に書いていた。そしたら、大阪隊が当日移動で新幹線の運転見合わせに引っかかった====ThisIsTheErrorMessege====とか。「そんなの、当日入りを選択する方が悪い」とか大上段に切って捨てていい問題ではないと思うのさ。

で、JFAから「3回戦から準々決勝までは基本的に下カテ側の都道府県でやる」との公式アナウンスメント====ThisIsTheErrorMessege====が。月曜にアナウンス→水曜に2回戦→木曜に3回戦の会場発表。事前に県協会にナシを通してないと出来ないよね、こんな大胆なスケジュール。
これ自体はなかなか画期的。「なにが画期的だ、ようやくだろ」と思う方も少なくないだろう。アンダーカテゴリー観戦側からは何度も提唱されていたことで、「その方が盛り上がる」とはその筋の主張。でも、実際はどうなんだろう。かつて、天皇杯が都道府県代表ではなく地区代表だった頃、1回戦でJ勢と対戦するカードは地区代表側の「地区」で行う、ということをやったけれど、チケットが売れずに県協会が大赤字を背負ったという話を聞いたことがある。うっすら聞いた話で裏は取れていないけれど。
おそらく、第74回大会のことだろう。Jリーグ勢と対戦になった試合は、1試合を除いてすべて「J勢の対戦相手の所属する地域の会場」になっている。====ThisIsTheErrorMessege====でも、この大会で派手に採算割れを起こしたため、次大会からはJ側の地域でやることが増え、その次の大会からは都道府県代表制に変わってJ勢は3回戦からの登場になるのでどの県のチームがJと対戦するか直前までわからないためにおそらく会場確保や移動の問題もあって「J側ホーム」が定着して現在に至る、と。ぼくはそんな認識。

ただね。上では「下カテに配慮しろ」と言っておいてナンだけど、ホントにアマチュア側はホーム開催を望んでいるのか?という点は考慮が必要。というのも、天皇杯本大会はJFAから参加チームに諸費用が支給されるから。それも請求書精算ではなく、チームの所属地と試合会場から機械的に割り出される規定額。だから、別手段で移動するなりで交通費を浮かせることも出来る。====ThisIsTheErrorMessege====自分たちのホームにすると、その『収入』は大幅に下がる。「カネより選手のコンディションだろう?!」というのはチームとして視た場合の基準で、クラブとして視たら違う基準が適用になることだってある。


結局のところ「下カテ側で3回戦」となったのは、ほぼ全部J勢同士の対戦となったカードのみ。====ThisIsTheErrorMessege====でもさでもさ、たしか五戸ひばり野には照明あったんじゃないっけ?名古屋グランパスを五戸送りってサイコー!(笑)……って思ったけど、夜に天皇杯が出来るだけの光量はないのかもしれないし、そもそも水曜夜7時から五戸でやっても八戸サポもどんだけ集まれるやら。県協会も赤字確実。まあ、名古屋開催だったら「俊ちゃん!俊ちゃん!」といまだにうるさいじゃからんも観戦に行けそうだし(笑)。

で、2回戦の結果。

格上が消えたケースが5試合。うち、J1が消えたのが4試合。おそらく、そこからジャイキリ賞が選ばれるんだろうけれど、もうさ、『ベ』に勝ったとこから選ぶのやめようぜ(笑)。どんだけジャイキリ賞に貢献したら気が済むんだ。====ThisIsTheErrorMessege====あと、パルはさすが。昨年の名古屋に続いて今年はガスを撃破。でも、この対戦については長野サポさんの呟き

「イナゴは食べ物です」

で試合前に決着がついていた====ThisIsTheErrorMessege====ような気がしてならない(笑)。天敵かよ(笑)。
で、本来なら甲府を下した八戸がジャイキリ賞の本命なんだろけど……運がなかったね。クラーケンとはいえいわきは県1部。J7がJ1を下したんだから、こっちになっちゃうよなあ。たぶん。
いわきvs札幌、有料配信があったから、ざーっとだけど視たさ。えーと、なんというか、この、『がっぷり四つ』ですか?カテ6つ離れてるんだけど、いわきが“弱者のサッカー”をした風にはまったく見えない。くわばらくわばら…………。
岐阜隊は、なんとなんと徳島を粉砕!シシさんもようやく来日初ゴール。でも、徳島はメンツ全とっかえだった====ThisIsTheErrorMessege====という話。それでもいいんだ、5月以来久しぶりの公式戦勝利だもんね。シシさんの初ゴール、どんなだったろ……と思ったけれど、なんでも地元テレビ局も映像を残していないとかの噂。どんだけ邪険にするねん(苦笑)。

水曜日のいわきFC

本当はここで各地域リーグの現状と、地域1部組は勝負駆け/権利持ち無関係に結託して“いわき潰し”をやって全社枠獲得を阻止しないととんでもないことになるかもよ」という話を書いていた。もちろん、いわきが札幌を破る前に、だ。
天皇杯が行われた水曜、そして3回戦の会場が発表された金曜で、いわきFCというチーム、いわきFCというクラブに接することは、手袋なしの素手で金属ナトリウムの塊を割箸で掴んで水の上を運ぶ====ThisIsTheErrorMessege====ような緊張を強いることになった。 友人が「いわきというフィルターを通すとその人のサッカー観とかクラブ観みたいなのが透けて見える」と呟いていて、あーなんかわかりやすいなあと思った。接する者に「どっちつかず」の立場を許さないのだ。以前、かつての松本山雅について「近づき過ぎない方がいい」と書いた====ThisIsTheErrorMessege====けれど、いわきについてのぼくの見解はそれとは違って「近づかない方がいい」になる。

ぼくには、いまのいわきFCが「金力善用の精神ですなわち生きる」====ThisIsTheErrorMessege====の最好例に思える。件の友人も呟いていたけれど、ぼくも清貧そのものに価値があるとはまったく思っていない。清貧を乗り越えて“クラブの存続”を含む「なんらかの成果物」を目指すことに価値があるのであって、清貧そのものは単なるハンディキャップだ。カネならあるに越したことはない。
地域密着についてもいろいろ言われているのかもしれないけど、クラブ運営は地域密着が先でなければならないという決まりはどこにもないし、もっと言ってしまえば地域密着せずともやっていけるのなら密着しなくたっていい。大抵は密着しないとやっていけないから密着を求めるだけの話。何度か書いているけれど、ぼくは地域密着を「地域がクラブを引き受けること」と定義====ThisIsTheErrorMessege====している。もし地域がクラブを引き受けなくても、企業がクラブを引き受けてくれてさらに企業名ではなく"いわき"を名乗ってくれる。派手な戦果を挙げてポジティブな話題を提供する。地域側としたら「ラッキー!」以外に何を言えばいいのだ。
選手に魔改造を加えて(笑)フィジカル・モンスターにして技術不足を補って踏みにじってしまう。これだってサッカーはフィジカルより個人の能力や戦術を優先的に鍛えなければならないという決まりはどこにもない。それで戦える相手だったら、それで戦えばいい。友人から教えてもらったのだけど、ラグビー日本代表でエディー・ジョーンズHCが「日本人の長所として『器用』『すばしこさ』と聞いていたが、データを視たらそんなことはなかった。よろしい、ならばフィジカルだ」と肉体改造に走って結果を出した====ThisIsTheErrorMessege====という話だそうで。サッカー選手だって、「フィジカルが弱いからテクニックや戦術スキルを磨く」のではなく「だったらフィジカルを上げてしまえばええやん」というのは1つのアプローチとしては正論だろう。
そして、それはJ1相手でも通用することを天皇杯で証明してしまった。いわきをどうのこうの言うより、いまのいわきに重殲滅をされてしまう上位カテ側が問題なのだ。実際、敗戦後の札幌サポの見解には「負けて当然の試合。フィジカルを甘くみていた」というものも少なからずあったと聞く。

カネはある。そのカネをチームを強くするために使う。有名選手や外国人選手の獲得ではなく、既存選手の強化で行う。あの絢爛たるクラブハウスにしても、そこにひとが集まる"コミュニティセンター"にするための投資だよね。うまくまわれば、そのクラブハウスにおいていわきFCは「コンテンツの1つ」になってしまうかもしれないけど、それでもいいんじゃないだろうか。クラブの収入源って大抵は「広告料」や「観客入場料」なんだけど、「クラブハウスのテナント賃料」ってのも、アリじゃない?

まあ要するにアレだ、世界的大企業が「学校法人ユーエー学園」を設立して、カールとマウス1両ずつにセンチュリオンにファイアフライにヤークトパンターにIS-2といったところをドドーンと揃えて大学選抜チームや社会人チームも粉砕してしまう『ユーエーいわき女学院』が戦車道全国高校大会に参戦してきた====ThisIsTheErrorMessege====ということだ。さて、今季の地域決勝に臨むところはどの程度の戦力を持っているか。「そこは戦術と腕かな。(ニヤリ)」と不敵に笑う隊長さんは、どこかにいないか?(笑)

金曜日のいわきFC

木曜に発表になった、清水vsいわきの平日ナイター日本平開催。まあしょうがないよね福島には開催出来るところがないんだからとぼくは普通に納得していた。ところが、金曜に発表になった2つのステートメントとそれへの反応にぼくは豪快に座りションベンをしそうになる。

いつまで残っているかわからないけれど、一つはいわきFCの大倉社長がクラブ公式サイトから発信したもの。====ThisIsTheErrorMessege====もう一つは、いわきFCの親会社ともいえるドームの安田社長がFBから発信したもの。まあ、後者はアンオフィシャルだし、じっくり読んでも呆れるか立腹するか嫌悪するかの反応しか出来ないのでここではスルー。大倉社長の方は、天皇杯の試合運営要項について具体的な指摘があるし、議論をする一つのきっかけにしてほしいとのご希望があるので、現状の要綱と大倉社長の見解と併記しながらぼくの見解もまとめてみよう。★は鋳造がこの雑文のためにつけた識別符号。

  1. J1クラブが出場する試合:15,000人以上(原則)収容できること。
    福島県には、15,000人収容のスタジアムが存在しません。そのため「試合を【★1】下位チームのホームで実施する」という普及の観点と、「J1規模の15,000人収容のスタジアムが必要」という要件の整合性がありません。平日のナイターゲームであることを考えても、【★2】「15,000人以上収容のスタジアムでの開催」を条件とすべきではないように思えます。
  2. ラウンド16以降の会場では、必ず照明装置が設置されていなければならない。
    福島県には現在、ナイター設備を持つスタジアムがありません。今回の清水エスパルス戦はラウンド32のためナイター設備は絶対条件ではありませんが、【★3】可動式のナイター設備を使用するなど、検討の余地はあったことが悔やまれます。
  3. 付帯設備スコアボード(3回戦以降は原則として、大型映像装置であること)。
    スコアボードについては、試合運営や演出という観点では、スタジアムに付帯されている方がいいでしょう。しかし、【★4】試合を行う上で「絶対にスコアボードがなくてはいけない」とはまでは思いません。
  4. ピッチは天然芝であり、原則として縦長105m、横幅68mであること。
    【★5】天然芝のグラウンドでの試合開催は、果たして「絶対条件」にふさわしいでしょうか。昨今の人工芝は改良が重ねられ、プレー感覚は天然芝と変わりがなく、雨の多い日本では高い利便性を発揮します。また女子W杯カナダ大会を始め、海外での使用実績も多くあり、世界では人工芝のスタジアムが急速に増えている現状もあります。

では順番に。

★1。JFA公式サイトには「下位チームのホーム」とはどこにも書かれていない。「対戦カードの下位カテゴリーチームが所属する都道府県の会場」だ。大倉社長も序文で触れているのでその点は理解していると思うけれど、ここで『ホーム』という用語を使うことで、ホームスタジアム====ThisIsTheErrorMessege====での開催権を奪われた、要するに『いわきFC』が開催権を奪われたとミスリードしてしまうorさせている可能性がある。
これは安田社長も勘違いしているように思えるのだけれど、天皇杯の開催会場を決めるのはJFAや都道府県協会であって、試合をするクラブではない。安田社長は「いわきFCに事前の通告も一切ないまま」と主張しているが、アプローチは逆でしょう。組み合わせが出た段階で、いわき側が福島県協会に「ウチが3回戦まで勝ち進んだらいわきで出来るんですか、それともあづまですか」と打診しておけばよかったのではないか。県協会から「いやあ、福島県には基準を満たす会場がないからごにょごにょ」と返事が来たら、その時こそ『夢』やらなんやらを朗々と歌い上げて福島県開催を働きかければいい。県協会を通して(あくまで県協会経由で)JFAと条件闘争をする準備の時間はあったのだ。

★2。理解できる。来年以降に向けて試合運営要綱に手を加えるべく、働きかけよう。今年は無理だ。大会そのものの運営に支障を来たさない項目に対し、途中で変更を加える必要がない。でも、AFC基準がらみでの条文だったら天皇杯委員会より上のJFAレベルで検討しないといけないから、難儀だけどね。

★3。これも上と同様。しかし、平日ナイター開催なのにナイター設備が絶対条件ではないのには少々驚いた。これは、「どうしてもどちらのチームの県も照明設備つきの会場を用意出来なかった場合は平日の昼間開催での強行を可能にする」ための保険としてラウンド16からにしたんじゃないか、という気がする。

★4。たしかに御説ごもっとも。試合を行う上でスコアボードは必須じゃない。スコアボードのない試合なんて掃いても捨てられないくらい観ている。45分時計だって必須じゃないし、更衣室だって、シャワー室だって必須じゃないさ。天皇杯本大会、ナメてませんか。

★5。2や3と同様。JFLやJリーグにも関係する大事な案件だから、是非ともJFAレベルで考える問題として継続的に提起してほしい。

というわけで、言いたいことはある程度はわかるけれど、事前に状況の把握やネゴシエートは可能だった部分もあるし、勝ち上がってからぎゃあぎゃあ喚いてどうなるというんだろうね。

これについて、金曜夜の眠くてアルコールが混ざったアタマでアンダーカテゴリー仲間とSNSでブレーンストーミングしたんだけど、もしかしたら大倉社長は「天皇杯はクラブではなく県協会マターだ」ということを知らなくてこんな提起をしたのではなく、「天皇杯は県協会マターだ」と知ってて提起をしたんじゃないかという見解があって、ここでも座りションベンしかかった。あー、なるほど。
『炎上マーケティング』とは、ぼくの知る限り、外で火遊びをしても燃えるのは自分のトコで、というか自分を燃やして注目を集める「焼身自殺型」が主流だと思うけれど、今回の大倉社長の提言が「知らなかった」ではなく「仕掛けた」ものであるなら、それは最近ではドナルド・トランプ氏がよく用いているような、相手を燃やして注目を集める「放火型」なのではないか。火を点けた先はJFAだ。もちろん、JFAも悪いところはある。今回の発表に『普及のため』なんて文言を入れたことで、Jがないところで開催してこそ『普及』じゃないかと発火性危険物にされてしまった。あの一節は不要だったね。


長々と書いたけれど、実は正直に言うと一番の衝撃は大倉社長の提言でも安田社長のボヤキでもなく、この2つのステートメントに対して「無条件賛同」を表明するサッカーファンが多かったことだ。「100%正論!」とかあって、全体の趨勢をネットでの反応から拾うのは危険というのは昨年のアメリカ大統領選挙などでもわかったことだけれど、それでも「お友達になれないとは言わないけど、お友達になりにくい方がこれだけいらっしゃるんだな……」と、少なからずヘコむ状況ではあった。
もし、清水vsいわきが福島あづま開催に決まってたら、どうなったんだろう……と考える。上記のとおり、天皇杯の会場は県協会マターだから、福島県協会は「出来るだけのことはした」との筋は立つ。それでも、いわき側が「仮設照明を立ててまであづまでやるんだったら、なんでいわきで開催しないのだ」との問題提起をしたら、これほどとは言わないけれど近いレベルでは燃えたんじゃないかと思うんだ。それくらい、今回のいわき側の"仕掛け"とそれに対する反応は、少々怖いモノがあった。

まあね、ぼくも50歳を過ぎて“老害”の域にたどりついているので、「あとは元気なお若い方でどうぞ」でもいいのかもしれない。けれど、それでも「うーん……ちょっと違うんじゃない?」という声は出していってもいいのかな、と。かつて“公安呼ばわり”された時====ThisIsTheErrorMessege====みたいにね(笑)。

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