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鋳造所長雑文録
2008/06/25◆片想いの石川ダービー、空襲警報のベオでステーキを喰う男
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6/22、日曜日。もしかしたら最後になるかもしれない“石川ダービー”を観に、夜勤明けで高速バスで金沢へ向かった。


現在、“地獄の一丁目”北信越1部でなんとか上位に喰いついて逆転優勝を狙うツエーゲンと、一方は見事に全敗、7試合で2得点のフェルヴォローザ。可能性として、両者が「同一リーグ所属」として“ダービー”と呼べる試合を行うのはこれが最後になると考えるのは突飛な妄想ではない、はず。それは、ぼくが“石川ダービー”を観れる最後のチャンスということ。北鉄磯部駅から歩くこと10分。曇り空の向こうに見えるサッカー場、ツエーゲンの赤い旗が見える。フェルヴォの青い旗は、まだ目に入ってこない。

スタンドに到着。もちろん、フェルヴォ側に着席。サルッパ達の人数は、それでもずいぶん減ったかな。目の前でアップしている選手達にいつものリズムのコールを送る。でも、選手側からの反応はほとんどないように見えた。これはちょっと気になった。反対側にはツエーゲンの赤いサポ達がいる。サルッパ達が歌い出した。

「ツエーゲンだけに〜は〜(絶対!)勝つしかねえ〜♪」

後にオマル師に訊くと、金沢戦の時はいつも歌っていたそうな。某テレビ局のコピー「絶対に負けられない戦いが、そこにはある。」を初めて聴いたときの漠然とした違和感の答が、ここにあった。「負けられない」ではない。「勝つしかない」のだ。

試合開始。序盤は互角っぽく見える。意外だったのはツエーゲンが畳みかけて来なかったこと。攻撃時にも人数をかけることを選択しない。チャレンジという意識に欠ける気がした。
もっとも、チャレンジする必要もない、という判断もあったかもしれない。普通にやれば勝ち点3は取れる。そして、この試合の目標は得失点差を稼ぐことではなく、勝ち点3を得ることだ、と。前半はスコアレス、でも試合内容的には納得出来るスコアレスだった。
後半。15分過ぎあたりに左からでっかいクロスを放り込まれてファーに詰めたキムタツが決めて先制。この時の、ぼくの横にいたフェルヴォ寄りお母さん達の話が印象に残った。「でも、まだ1点だから」。これは、おそらくその後に「追いつけるわよ」が省略されているのではない。「こないだは10点だったし」が省略されている====ThisIsTheErrorMessege====のだ。でも、そんなお母さん達でも、さすがにこどもをフェルヴォ・ジュニアに入れてるだけのことはあって、先制される前は「ツエーゲンに勝ってくれたら嬉しいよね♪」と話していた。
先制点から15分くらい過ぎて再びキムタツが2点目。それから後は、試合はハーフコートマッチならぬほとんどクォーターコートマッチになってしまう。フェルヴォはクリアボールをセンターラインまで持っていくことすら出来ない。時々、トップで張る13番賀谷までロングボールが入ることがあるけど、応対するのが賀谷に比べて体格で圧倒的に勝る中尾真那だから、ポストをこなすことも出来ない。そのまま0−2で終了した。


『悪者見参』====ThisIsTheErrorMessege====に、映画『アンダーグラウンド』の冒頭シーンが引用されていた記憶がある。たしか、こんな感じだ。

ナチスドイツの空爆が続くベオグラード。空襲警報が鳴り響く中、男が一人黙々とステーキを食べている。「あんた、こんな時によくステーキなんか食べてられるわね!」と女がヒステリックに叫ぶと、男はこう応える。「意地だ」

“ダービーマッチ”という単語に付随しているものは、“ダービーマッチ”を支えているものは何か。中にはそれが『憎悪』にまで行ってしまっている対決もあるようだし、サッカーファン、中でもゴール裏で跳ねる戦闘隊の中には「相手を打ち負かすには『憎悪』は重要なオプション」と信じている向きも何やらいそうな昨今。
でも、ぼくは今回の“石川ダービー”を観て思った。“ダービーマッチ”に『憎悪』は要らない。要るのは『意地』。そして、それがあれば十分だ。

フェルヴォの選手はよく健闘したと思う。カラダを張った必死の守備で、2点に抑えた。「心」は確実に見て取れた。敗れたが、サルッパ達には受け入れられる結果ではないかと思う。
逆に、金沢側はどうか。この0−2というスコアをどう視るか。「いまが底だ、と信じたい」とは知人の金沢サポ。実際、これが底でなければ石垣島は遠く遙か彼方だとは思うが、彼の言葉には“ダービーマッチ”を支える『意地』の要素はどこにもない。残念ながら、現在の石川“ダービー”はフェルヴォ側の一方的片想いということなのだろう。

さあ、今後のフェルヴォはどうなる。残念ながら北信越2部落ちは想定せざるを得ない。現在の北信越2部のレベルはわからないけど、今日の試合内容をそのまま持っていけば、勝ち点を拾うことは出来るようにも思える。

と厳しい予想になってしまうのも、実力差うんぬんより、いまのフェルヴォには「“点を取る”アイディアが決定的に欠落している」としか見えなかったからだ。これこれこうやってゴールを狙おう、でもだめだった、0−2、という試合には残念ながら見えなかった。
もう一つ、今日の試合はやはり“ダービーマッチ”だったということ。選手達は『意地』という名のかなり高オクタンの燃料で動いていたという印象がある。他のカードで、この日のように相手に向かっていくことが果たして出来るか。


ただ、言えることがある。今後、フェルヴォローザ石川白山が存続する限り、どのカテゴリーでプレーすることになっても、この日にスタンドで青い服を着て叫び続けたサルッパ達がツエーゲンになびくことは、おそらく、間違いなく、ない。それはツエーゲンがJFLに行っても、Jに行っても、だ。空襲警報の鳴るベオグラードでステーキを喰い続ける男である続けるだろう。

ぼくの認識====ThisIsTheErrorMessege====は間違っていた。賛同出来ないなら、別の道を歩むしかない。その結果、戦うことになっても。そして、敗れることになっても。
戦って敗れることは悲劇ではない。結果に過ぎないのだ。

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