cyic.co.uk 吉田鋳造総合研究所
鋳造所長雑文録
2007/12/17◆『専門誌』は地域決勝をどう伝えたか
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JもJFLも地域決勝も終わって、基本的にサッカー観戦はOFFモード。だから週末に夜勤ぶち込まれても平日に連休組まれてもそんなの関係ねぇ!と思っていたのだけど、10・12・13が休みになったらトヨタカップじゃなかったCWCを視に行くしかないではないか。無理すれば3試合観戦可能ではあったけど、14日が普通に日勤だったしミランなんぞ別に視たくもないしで観戦は10と12。


10日、豊田スタジアム。セパハン×浦和。名鉄三河線は、お父さんも坊やもお姉さんもまっかっか。会場の入口前ではイベントも打たれていて、ハレの日の印象。チケは完売だとか言う話もあったけど、実際は6〜7割程度の入りじゃなかったかな。トヨタの関連企業とかで招待券が結構出回ってたみたいだし。
ぼくは真面目にチケ購入して、メインスタンド4階席からほとんどプレミアシップ中継のような俯瞰の景色を愉しみました。開始数分で「このセパハンはあのセパハンじゃない」って感じだったし、赤軍は普通に勝った感じ。相馬の前がスッカスカで、もしかしたら罠なんじゃないかと思うくらいスッカスカで、あれだけスッカスカならいいクロス何本も出せるよね。長谷部は、あれは入れないとシエナは残留出来ないぞ。試合終了後ダッシュで豊田市まで行って電車乗り継いで帰ってきた。知立で刈谷方面に乗り換えるひとが多かったのは、もしかして“MLながら”で帰るってことかしらん。皆さんタフなことで。


PC買い替え計画発動で財政発動もあったし、なにしろ連休なのだから時間はあるんで東京往復は“のびのび”で。平日は電車も空いてて“のびのび”族も少なくていいねえ。一応、仕事の資料も持っていったのだけど、結局は一度も開くことはなかった。というのも、車内ではサッカー雑誌を読み耽っていたから。マガジン、ダイジェスト、J‘sに批評。いずれも、先週行われた地域決勝について書いてある。ぼくの記憶が確かならば、こうもたくさんの雑誌が地域決勝を取り上げたことは有史以来なかったと思う。なぜこうなったか。Jを目指す注目のクラブが多かったからか。たぶん違うね。単純に、関東開催だったからだ。風の噂では、次回の決勝リーグはかなりなトコで開催らしいんだけど、さあて皆さんどうするのかな。

というわけで、4誌を読み比べての感想など。


ぼくの中で一番の高評価は『ダイジェスト』。カラー3ページ。関係者の短いコメントを織り交ぜながら、普通にこの大会の『3日間』を伝える構成になっている。1日目・2日目と3日目で長さや濃さや“瑞々しさ”がまったく違うし、なにより1日目と2日目については関係者のコメントが一つも載ってないので、おそらく取材者は3日目だけ熊谷に来て、金曜土曜については公式記録を視ながら書いたのかなとは容易に推測出来るが、それでも一番フラットに読むことが出来た。
もう一つの週刊誌、『マガジン』は白黒2ページ。こちらは『ダイジェスト』と違い、地域決勝の特殊なレギュレーションもJを目指す地域Lクラブの置かれている状況も説明しつつ、3日間の試合内容を走って紹介。取材者の吉崎氏はおそらく3日間とも熊谷にいたと思われる。氏は大会前に自身のブログでニューウェーブ北九州に対する思いを綴っていたので、ニューウェーブ関係者のコメントが多くなるのは仕方ないか。ただ、コメントを載せているのが北九州と岡山の関係者ばかりだったのは少々気になる点。


問題なのは、『批評』と『J‘sサッカー』。ともに執筆者は宇都宮徹壱氏。さあ困った。


とにかく『批評』における彼のルポには、暗澹たる気分になったのを正直に告白しよう。4ページ、10段に及ぶ記事は大まかに以下の構成となっている。

沖縄かりゆし問題=1〜2段
地域決勝のレギュレーション説明=3〜6段
全社のレギュレーション説明=7〜8段
今年の全社に関して=9段
問題提起=10段

これで「地域リーグの叫び」ってサブタイトルは、ちょっと眼線が偏り過ぎていませんこと?これは、「地域リーグの叫び」ではなく「Jを目指す地域リーグ所属クラブの叫び」だ。季刊誌と週刊誌では締切が違うのは当たり前だし、だから“批評”誌に実際の「今年の地域決勝」について書けるはずもないのはしょうがないのだが、それにしても地道な取材を売りにしてきた彼の記事にして『生きた情報』が一つも載っていないというのは非常に気になる。氏はこの投稿で何を伝えたかったのだろう。

宇都宮氏は、地域決勝のレギュレーションに激しい「違和感」を感じている。それはこれまでの文章でもわかる。だから、今回もバリバリの『専門誌』にレギュレーションを細かく説明することで「どうです、おかしいでしょう?」と読者に訴えようとしているのではないか。もしかしたら、本人に訊いたら「“違和感”ではない。“危機感”だ」と主張するかもしれない。
ここが、ぼくら「地域決勝を地域決勝として視る者」と、「Jの側から地域決勝を視る者」の視座の違い、なのだろう。最近はさらに踏み込んで「代表の側から地域決勝を視る」立場のひとも現れたらしい。いやはや、くわばらくわばら。

宇都宮氏のスタンスは、月刊誌『J‘sサッカー』における地域決勝の記事でもまったく変わることがない。同じ原稿を加工したんじゃないかと思うくらい変わらない。ここまでぶれないってのも大したものだ。地域リーグを地域リーグとして視ている者にとって、宇都宮氏は地域決勝やJ志向の地域リーグ所属クラブを取材し雑誌等に書いてくれるだけでありがたく、もう一歩の踏み込みを期待する我々が間違っているのかもしれない。いや、もしかしたら彼は踏み込んだ記事が書きたいのかもしれない。けど、おそらくは編集者がそれを許さないだろう。だって、例として名前を出して悪いけど、ノルブリッツや埼玉SCや矢崎バレンテや三洋電機洲本のこと書いたって、売れないもん。たぶん。
しかし、『J‘sサッカー』での氏のレポートは、「これ、ありかあ?!」と独り言を叫んでしまいそうな構成だった。ここでも地域決勝のレギュレーションを3段に亘って説明。しかし、こちらでは問題提起は一切書かず、しかも大会そのものについても書かず。熊谷に来た4クラブの“関係者”を1人ずつピックアップして紹介。逃げた?(笑)いや、人選は完璧だと思いますが。


全社や地域決勝からしか、J志向のクラブからしか地域リーグを視ないというのは間違っている。代表のサッカーからしかその国のサッカーを視ない、というのと同じくらい間違っている。もし、地域リーグという環境でJを目指すことの荊の道という点で“地域リーグの叫び”を伝えたいのなら、全社や地域決勝に貼りつくのではなく、経営問題が明らかになった直後からフェルヴォローザ石川・白山に密着するのが王道かつ近道だったのではないか。フェルヴォローザが松任FCと名乗っていた頃に、氏はスポナビで天皇杯県予選を突破してザスパと対戦した試合のことを書いている。フェルヴォローザとパイプがないわけではないはずなのだ。
逆に言えば、今年のフェルヴォローザを伝えるひとがいないことで、またしても同じ悲劇が起きる可能性が潜伏してしまった。友人のオマル師は「日本サッカー界は福島FCを総括していない」と主張する。いままた、誰もフェルヴォローザを総括しないままに歳を越そうとしている。同様の悲劇は、おそらくまた起きるだろう。

そんな中、瑣末なことだけど『批評』における宇都宮氏の文章で一ヶ所「よくぞこう書いてくれた」と思った部分がある。
『「百年構想」の掛け声に奮い立ち、「わが街にもJクラブを」と名乗りを挙げるクラブの数は、ここ数年』(以下略)
よくぞ“わが街に”と書いてくれた。巷で見かけるこの類の表現では“おらが街に”というものがほとんどで、「なぜ共通語を使わないのか、東京>>>地方という視座があるのではないか」とずっと不愉快に思っていたのだ。


地域リーグと各県リーグの入替もだいぶケリがついた。シュペルブが戻って来てフェアスカイが落ちた。今年も図南は上がって来れなかった。「天皇杯の鬼」テイヘンズが県に落ちた。チーム数拡大でヤーマンFC宇部というちょっと魅力的な名前のクラブが地域レベルにやって来る。東海・関西・四国・九州はこれからか。
Jを目指すクラブの熾烈な生存競争の場となった昨今の地域決勝は、もちろんそれだけの大会ではなく、ちゃんと地域チャンピオンズリーグの側面も残っている。今回は、そういう立場のクラブが決勝リーグに残れなかっただけの話だ。もし、関東の熊谷開催だった今年の決勝リーグに「ホンダロック」「矢崎バレンテ」「ノルブリッツ北海道」「ヴォルティスアマチュア」が勝ち残ってやって来たら、取材陣はどれくらいだっただろう。観客はどれくらいだっただろう。

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