cyic.co.uk 吉田鋳造総合研究所
鋳造所長雑文録
2006/03/24◆思い出にケリを入れろ。
▲home ▲index

片手に夢をのせて飛ぶよ
風が強い こんな夜に
プロペラ 僕が雲のすきま
良い事も悪い事も忘れたい

ただよう霧の夜 胸はふるえている
フィルムが流れている


まだ20代のころはライブハウスなんぞに行くこともあったわけだ。と言っても、まだ売れる前の連中を品定めしているわけじゃなくて、単純に自分の好きなバンドがホールGIG打てるだけの実力はあったかもしれないが人気なんかなかっただけの話であって。サッカーを観始める数年前の時点で、というかそのずっと前からぼくはマイナー志向だったんだよな。

名古屋にはE.L.L.====ThisIsTheErrorMessege====という老舗のライブハウスがあって、その後にクラブクアトロが出来た、はず。名古屋ではぼくはこの2軒しか知らない。観たバンドは、くじらにパール兄弟にTheSuzuki====ThisIsTheErrorMessege====に。そしてカーネーション。

それまでに発売されていたカーネーションのアルバムは『DuckBoat』====ThisIsTheErrorMessege====以降全部持っていたはずだ。かなり聴きこんでもいた。だから、知らない曲なら新曲以外にないはずだった。ところが、いきなりの1発目がまったく記憶にない曲だったのだ。しかも、新曲ではなさそうな雰囲気。最近の曲風とはだいぶ違う。なんだなんだ、なんなんだ。いきなりのカウンターパンチ。2曲目以降のライブの盛り上がりにもちゃんと参加したはずだが、その夜は1曲目の衝撃だけが刷り込まれた。
しばらくして、その時のライブのレビューが名古屋のタウン誌====ThisIsTheErrorMessege====に載った。そこには「“カメラマンのヘリコプター”からスタート」とあった。そういうタイトルだったのか。間違いなく、既存のアルバム未収録。そして、やがてその曲が“夜の煙突”のB面収録曲だということを知る。

“夜の煙突”。間違いなく、カーネーションの代表曲。森高千里がアルバム『非実力派宣言』でカバーしている。====ThisIsTheErrorMessege====あのアルバムには“17才”のカーネーション・ヴァージョンも入っていたっけ。いまでもカーネーションのライブはこの曲で総立ち状態で終わるのだろうか。
で、実は“夜の煙突”はカーネーションのデビュー曲でもある。と言っても、もちろんメジャーデビューではなく、インディーズから。あのケラ====ThisIsTheErrorMessege====が仕掛けていたナゴムレーベルから出たシングル盤“夜の煙突”のB面が“カメラマンのヘリコプター”だったのだ。インディーズから出た塩ビ板シングルのB面。あまりに縁が薄い。薄過ぎる。もう2度と、この曲に出会う機会はないだろう。そう思っていた。


そんな“カメラマンのヘリコプター”との瞬間的な出会いと別れから十数年。もうぼくはライブハウスに行く体力も気力もない40代オヤヂになった。のだが。

つい一月前のことだ。ひょんなことからカーネーションのリーダー・直枝政広====ThisIsTheErrorMessege====のweblogにたどり着いた。たぶん、カーネーションの新譜情報はないかいな?という程度で探っていただけだったと記憶しているが、定かでない。しかし、そこには驚愕の情報が書かれていた。ナゴム時代の音源がCDになるというのだ!

そこには“カメラマンのヘリコプター”が収録されるかは書かれていない。そのCD『ナゴムポップスコレクション』の情報を調べても、「“夜の煙突”のデビューテイクが収録される!」としか書かれていない。当然だろう、かたや代表曲のファーストイシュー、ぼくが追っているのはそのB面だ。しかし、「収録されないはずはない!」との鋼の信念で、曲名が公開される前にTOWER_JPに発注してしまった。
果たして、それからしばらくして収録曲が公開された。“カメラマンのヘリコプター”もちゃんと入っていた。願いは通じたわけだ。発売は3月21日。22日には発送が確認された。

そして23日の夜遅く。帰宅してCDを受け取った。“カメラマンのヘリコプター”は7曲目。我慢して1曲目から聴くことにした。5曲目のあたりで「酒を呑もう」と思った。祝い酒だ。ならば、飲みかけの芋焼酎“黒霧島”では相応しくない。部屋をごそごそと漁って、何年前に入手したのか忘れてしまった未開封のスコッチ『Ambassador』のキャップをねじ切った。ナルシスだと笑うなら笑え。そして7曲目。

正直に言おう。十数年前の記憶と一致しない。ただ、あの時はライブだ、しかも1曲目。観客に火を点けるためにアレンジを激しくいじった可能性は否定できない。そして、ここがとても大事なのだが、いいのだ。実にいいのだ。記憶と同じかどうかは、もはや関係ない。初期カーネーションの特徴である、気負った青臭さが全面に出た歌詞と音世界。ぼくが十数年も記憶の奥底にしまい込んでいたのは、この曲だったのか。

ぼくは、以前この雑文に書いた『天文学の話』を見つけた時====ThisIsTheErrorMessege====と同じくらいのアドレナリンが噴出して制御不能になった。いまこの雑文を書いているのは23日・木曜の夜だが、木曜の夜でよかった。金曜の夜だったら、いくらでもスコッチを注いでしまい翌日は使用不能になってしまったことだろう。
いや、木曜夜の現在もこうして雑文打ちながら想定以上のペースで『Ambassador』の残存量が減っているのだが、知ったことか。“カメラマンのヘリコプター”がぼくの手の元にあるのだ。今夜祝わずにいつ祝えばよいのだ。今回の雑文は、勢いで書いて勢いで色づけして、そのまま出す。繰り返すが、知ったことか。


ただよう霧の夜 胸はふるえている
フィルムが流れている

カメラマンのヘリコプター
カメラマンのヘリコプター

(『ナゴムポップスコレクション』DDCH-2514)

▲top