吉田鋳造総合研究所
鋳造所長雑文録
2006/02/06◆光と陰と闇と、『酔臥居』のオヤジ
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しかしまあ、下部リーグマニアの間で話題沸騰!……になってないとおかしいくらいの岐阜隊の補強ぶりである。4部に上がったばかりで、これだ。ぼくがweblogで「なんか吸っただろ?!」と書いたのも無理はない、と思うでしょ?今年も、この時期に火が消えかかる移籍市場に酸素を吹き込むフイゴの役を4部が果たすのだろうか。岐阜隊とツバイゲン金沢====ThisIsTheErrorMessege====が引っ張っているようにも見えるが、かまとんかち====ThisIsTheErrorMessege====も地味ながら的確な補強をしている模様。一方、2つ上がって九州の雄となる予定の長崎隊====ThisIsTheErrorMessege====の動きがおとなしいように感じる。油断してると寝首をかかれるとみたが、いかに。

しかし、こうした急激な補強に対し、諸手を挙げてバンザイ出来ない自分もここにいるわけだ。それは、いままでの選手がかわいそうだとかの理由ではなく、この派手な動きが1年ポッキリの一点突破全面展開を志向していないかという危惧。戦力財力の逐次投入が愚の骨頂なのは認めるが、クラブの長期ビジョンが描けているのか、強さと長持ちのバランスが弾けるとどういうことになるのか。この点については、過去にも書いたかもしれないが、“右萌え”氏が「日本のサッカー界はいまだに『福島FCの解散』を総括できていない」と喝破する部分に大いに共感せざるを得ない。

解散といえば、岐阜にはかつて“雄”の名を欲しいままにしていた西濃運輸サッカー部があった。表だって伝わる「西濃解散の理由」とは異なる話をぼくは聞いている。それが本当なのかはわからないが、いまから真偽がわかったところで西濃が復活するわけでもないし、その異なる話をここで明らかにしてもおそらく誰も幸せにならないだろう。だからぼくは“信憑性の高い噂話”として火葬場まで持って行く。もしどうしても聴きたいというひとは骨を拾って訊いてみてくれ。西濃の解散からもう8年経つのだね。


話は戻って岐阜隊だが、今年から率いるのは戸塚哲也。weblogに書き込んでくれたSun'sSon氏の「サッカーの光と陰、そして闇までも知る」という評は的を射ている。西濃解散と同じ時期に起きた、サッカーの“闇”。『福島FCの解散』と同様に総括が出来ていないもう一つの事象。『ワールドブリッツ小山事件』。

そういえば、雑誌に載った戸塚哲也の長編インタビューでも彼はWBの件について一切語らなかった。いや、インタビュアーには語ったようなのだが「多くの人に迷惑がかかる」という理由で一切の公開を禁じていた。おそらく、彼もWBの真相については火葬場まで持って行くつもりなのだろう。
その雑誌、『サッカー批評』第4号====ThisIsTheErrorMessege====を本棚から取り出し、土曜の夜に“一ノ蔵・しぼりたて”を呑みながら読み返してみる。タイトルは「『酔臥居』主人・夜話」。

いやいや、購入した時も河崎三行氏の文から誌面の作り方まで「しばらくはこの雑誌とはつきあっていこう」と決意させる内容だったのだが、いま読み返してみると、戸塚が岐阜隊の監督になるという事象を踏まえて読み返すと、げげつと思うような表現が散在していた。
とっくに絶版SoldOutになっているので、法に抵触する可能性に怯えつつも、長くなるけど抜き出します。双葉社さんごめんなさい。


でもサッカーがあまり盛んでない都市じゃ、本気で打ち込むのは高校までという意識の子が多い。どうしてもっと上を目指さないんだって聞いたら「自分らヘタですから」って。それじゃ、あまりに夢がないよね。彼らはヘタだからプロになれないんじゃない。プロのプレーを実際に見て参考にする機会がない、あるいはプロになるための術を知らないだけのことなのに。そういう若い子達のために、夢を与える環境を何とか作れないもんかなあ……。
そのためには地元に魅力あるプロチームがある、しかもチームで育てた選手が多くいるって形が理想なんだけど。でもそれはかなり難しい。不況の影響もあるし。正直なところ、日本人は本質の部分でまださほどサッカーが好きじゃないんじゃないかって気がするんだ。社会資本の乏しいところで一からプロのクラブチームを立ち上げるのは、並大抵のことじゃできないと思う。

そして、インタビューの終わりに、インタビュアー河崎氏はこう書く。
「しかし自身で計らずも口にしたように、やはり彼の心はトップレベルの戦いの場にある。(中略)見る者の心を捕らえて離さないアタッキング・サッカーを誇るチームを彼が率いる。そんな姿を何年か後、目にすることができるのだろうか?」


WB事件を受けて、戸塚哲也には「地方都市での『Jを目指すサッカークラブ』の現場」なんて近づきたくもない存在だったのではないかというぼくの想像は的外れだろうか?天の岩戸に隠れた天照大神。
高千穂伝説によれば、閉じた岩戸の前で天鈿女命====ThisIsTheErrorMessege====肌も激しく露わな姿で歌い踊り、訝しんで戸を開けた天照大神を洞窟から引きずり出してこの世に明るさが戻った====ThisIsTheErrorMessege====とある。戸塚哲也を地方4部リーグの現場に引きずり出したウズメは誰だったのか。おそらくはゴリ若頭か。しかし前出のインタビューで戸塚は「なにより、サッカーを知らないフロントが多すぎる」と話している。その点、前監督の勝野組長がGMに就任したのは心強かろう。
そもそも、天照大神も外の世界は気になっていたのだ。だから、ウズメの踊りに岩戸を開けた。戸塚哲也も、居酒屋のオヤジをしながらも現場の血は枯れてなかったということなのだろう。

もちろん、結果が求められる社会人クラブの監督の能力については未知数だ。しかし、このインタビューを読み返すと、「ついに“長良川放送”復活の時が来た====ThisIsTheErrorMessege====のではないか?」という気にさせてくれる。
難しいのは、岐阜県は通例だと天皇杯社会人予選を5月までに終えてしまうことだ。いくら個人能力で勝っても、これだけメンバーが入れ替わってチームが作りきれるか。昨年も社会人ブロックの決勝で大垣コーガンズに敗れ、初夏にして天皇杯の門が閉じている。
そして東海1部。なんだかんだ言っても静岡勢は強いよ。それに中京大。今年の地域決勝の東海枠は1つ。厳しい戦いだ。1年で結果が出ればいいが、そうも言ってはいられない。

それでも、とにかく今回の岐阜隊プロジェクトそのものをWBの二の舞にしてはいけないのだ。こりゃあ、ぼくも真剣に岐阜隊とつきあうことになるのかもしれない。もちろん、未観戦会場の試合とかちあった際にはいろいろ悩むことになるのだろうけどね。


そして、次に上京して呑む機会があったら、百合ヶ丘の『酔臥居』に行こう。行かなければならない。カウンターで、青唐辛子を散らせた厚揚げをアテに焼酎を呑みながら、7年前の『サッカー批評』第4号をもう一度読み返してみたい。その頃、岐阜隊はどんな戦いをしているのか。

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