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地域CL@市原臨海(後編)
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2016年11月27日

雨です。でも、友人の気象予報士によると「いま、市原にかかっている雨雲が抜けたらあとは雲の切れ目」とのこと。大雨での観戦……ということではなさそうだ。
観戦仲間が『スポニチ』『ニッカン』を買って来た。これまで、地域決勝がこれほどまで大きくスポーツ紙(もちろん全国版)に取り上げられたことがあるだろうか。参考資料としてぼくも買っておくことに。しかし、「友人のラモス瑠偉氏がスタンドで見守る中……」の一節には膝から崩れおちたよ。もっと他に書くことないんか(苦笑)。


東海帝王をはじめ、東海組の観戦族はナーバスになっている。こんな形で「東海からJFLへ送り出す」ことになるとは……。それにさらに火をつけたのが、三重サポが歌い出した『Love Me Tender』のチャントだ。町田ゼルビアのチャントで知られているが、「歌い方」がまったく違う。まったく“力強くない”。ぼくも含め、地域決勝を観続けている“歴戦”の観戦族の涙腺が危険領域を突破。「あんなに選手に寄り添うように優しく響かせられたら……」と涙を流す者も。でも、ぼくの聞こえ方は彼とは違っていた。

「この試合、絶対勝つ」と強い気持ちを持つ!持ちたい!と思いつつ、「もし落としたら、“すべてを失う”わけではないけれど“これまでのほとんどを失う”ことになる」という不安。恐怖。それらが混ざり合って、三重サポの心は「いっぱいいっぱい」になっていて、その「いっぱいいっぱい」をそのまま歌ったらああなった……という風に聞こえた。つまり、『決戦』直前の「サポの気持ち」すべてを均等にミキシングすると、ああいう歌声になるのだ、と。

三重 4-1 鈴鹿

早い時間にPKで鈴鹿が先制。メイン観戦族に不安が走った。内容は互角以上だし、まだ時間は十分あるのに、早い時間の失点でチーム全体が焦ってしまって無為に時間とエネルギーを使ってしまい自壊していくという例をぼくらは何度も観ている。ぼくが思い出したのは、戸塚さんのミーオに完敗した時の松本だった。しかし、やはり三重は違っていた。
これもやはり海津監督のなせる技、だろう。おそらく選手たちに「前半に先制される」というシナリオをキチンと伝えてあったのではないだろうか。だから、三重の選手はその状態になった場合のサッカーを、おそらく「ミーティング通り」にこなし続けた。『決戦』で「先制される」という事態は“非常事態”ではなかったのだ。果たして、藤牧がキッチリとストライカーの仕事をこなして同点に。そして、前半終了直前にセットプレーから逆転。鈴鹿からしたら、いわゆる「最悪の時間の失点」ではある。が。
東海リーグ通の観戦仲間によれば、鈴鹿の監督は試合中にフレキシブルに対応するということをあまり得意としていないらしい。だから、逆転を許したのが前半のウチだったのはまだよかった、と。鈴鹿はどこまでハーフタイムで修正できるか。ぼくは、それだったら三重は後半開始から畳みかけて早いうちに3点目を奪って鈴鹿を“折りに”来るだろうと思った。
後半開始から三重がギアを上げた。おそらく、このギアの上げ方も「用意したプランの一つ」だろう。やはり第2戦を“捨てて”坂井を温存した海津監督の策は完全に実った。加倉・坂井・藤牧の攻撃陣がのびのびとプレー。特に、坂井がいることで孤立しなかったこの試合の藤牧は超電磁砲(レールガン)級の破壊力だった。後半16分に加藤が3点目を奪って予定通りに鈴鹿を“折り”、その2分後には“折った”患部を踏みつぶすかのような見事なカウンターから藤牧が仕留める。

2016シーズンの三重vs鈴鹿の『公式戦』はなんと6回目。これまで鈴鹿の4勝1分====ThisIsTheErrorMessege====だったけれど、最後の最後の、本当に「雌雄を決しなければならない」試合で三重は鈴鹿を圧倒した。「鈴鹿は、まず小澤と北野を確実に抑える。これで攻撃力は半減できる。あとは火力勝負で勝てる」。海津監督という男、やはりただものではない。これで三重は勝ち点6で2位以上を確保。JFL昇格枠は決まった。

水島 0-3 今治

試合開始前の写真撮影。今治側にしか集まらないカメラマン達に「こっちにも来てよ!」と手を振って招く水島の山部はさすがだ(笑)。しかし、申し訳ないが、試合前から勝ち点の行方は“わかって”いた。前日の試合での水島の動きを観て、「いまの今治を相手に勝ち点を得るのはかなり困難だろう」と。だから「せめて1点獲ろう!」という感じだったが、残念ながら水島は既に“弱った魚”であり、今治はそんな水島の料理方を心得ていた。前半、とにかくパスまわしで水島守備陣を翻弄する。はじめから「時間をかけて『三菱水島』という魚を弱火でオーブン焼きにする」つもりだったのだ。45分かけてスコアレスも想定内。ハーフタイムで味見をして、「これは、ちょっと火力が足りないかな?」とちょっとだけ火力を上げたり魚の表面に包丁を入れたりの細工をして。で、60分かけて先制点。あとは、香草を振りかけたり白ワインを注いでから蓋をして蒸し焼きにするなどして2得点。90分かけて、美味しく出来上がり。「せめて1点獲ろう!」と声を出していたぼくらも、途中から「せめてシュート1本撃とう!」に変わった。水島は後半にシュート2本を放つのが精一杯(うち1本は『情状酌量』的カウント)。前後半で水島のCKは0、今治のGKは1。『愛媛全社』のウィナーは、すでに燃え尽きていた。


では、最後に4チームの総括。

まずは最下位の水島。自分たちのサッカーは貫いたと思うけど、それをこのレベルを相手に3日間は通じて行うのは困難だったということ。面白かったのが、富山での1次ラウンドでの出来事。観戦仲間から聴いたのだけど、水島の選手たちが試合後に雑談しているところの近くにいることが出来て、話の内容が聞こえて来たというのだ。守備陣が「なあ、後ろはもう疲れるから、臨海では『パスサッカー』やろうや(笑)」とか、高瀬には「『とりあえずお前に蹴っときゃええんやな』って、全社の3日目でわかったわ」とか。特に後段の話はぼくにとっては衝撃もいいとこで、全社の初日と2日目で「戦術は高瀬」の決定力で勝ち上がるのを観て感動していたのだが、肝心の選手によればその段階ではまだ「戦術は高瀬」じゃなかったというのだ。1ヶ月前の俺の“感動”を返せってんだコノヤロー(笑)。まあ、利子はトイチで赦したるわ(笑)。

3位の鈴鹿。『愛媛全社』で剥けた、というのは多くの東海リーグ・ウォッチャーから聞いていたし、Cグループの突破も納得出来る。しかし、やはり三重と比べると火力不足は感じた。来季はまた刈谷や伊勢志摩と“切った張った”の戦いになる。経験を結果に上積み出来るよう、がんばってしてほしい。そして、全国の舞台で『三重ダービー』を。

準優勝の三重。海津監督のリアリズムに徹した戦い方は見事だった。コスモ四日市以来、21年ぶりに三重県に1種の全国リーグが戻って来る。====ThisIsTheErrorMessege====日程次第だが、「コスモ四日市・最後の公式戦」を見届けた====ThisIsTheErrorMessege====者としては、ホーム開幕戦は是非とも訪れたいものだ。ウチの最高尊厳同志とか、補強にどうでしょう?全国リーグを知るベテランって頼りになるよ~(たぶん)。

優勝の今治。おめでとう。四国リーグと全国リーグでは「リーグに参加する」だけで段違いのストレスがかかる。『チーム強化』のノウハウは東京から持ってきたと思うけど、『クラブの実務運営』のノウハウも早く手にしてほしい。愛媛隊にアタマを下げてもいいと思うんだ。
今治の置かれた実情って、昇格時の岐阜より遥かに厳しい。今治は、とりあえずヒトもカネも東京から持ってきてここまで来た。しかし、同県にすでにプロリーグを戦っているクラブがある。そのクラブがある街とは圧倒的に距離があるわけでもなく、歴史的な対抗心があるわけでもない。県内メディアも一本化されている状況で、どうやって自分たちの歌声を県内に響かせるのか。「ダイレクトに東京を経由して全国に響かせればいい」なんて思わないことが肝心なのだが、現状ではそれしか歌声を載せるラインがないように思える。“血縁”を“地縁”にシフトさせるステップは岐阜より遥かに困難だと思われるが、「FC今治」で居続けるのであれば、それは必ず通らなければならない道だ。

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