吉田鋳造総合研究所
鋳造所長雑文録
2017/07/21◆おとなしくしていてもいろいろある・その2
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岐阜隊の話・その1 カタルーニャの旗

先日、ツイッターで「岐阜のゴール裏はスペイン国旗を掲げているけれど大丈夫なんだろうか」という書き込みがあり、それが結構な速度でRTされているのに気づいた。瞬間的に「これはヤバい」と思った。ゴール裏がスペイン国旗を掲げていることではなく、それ(スペイン国旗の掲示)を問題視することに、だ。

当該の呟きをしたひとに拠ると、根拠は「シシーニョがいるから大丈夫だとは思うが、ビクトルはカタルーニャ出身だ」と。おそらくこの方は善意で呟いたのだ……と思いたい。しかし、善意のフリをした悪意で使われる可能性はあると思った。
この呟きを読んでカタルーニャ独立運動====ThisIsTheErrorMessege====を知った、まだ若いサポ君が深く考えずに「そうか!スペイン国旗を出しちゃいけないんだ」と思ってしまってカタルーニャ旗を岐阜ゴール裏に掲げる……としたら。こっちの方が政治案件、国際問題だ。日本のFC岐阜のサポーターはカタルーニャ独立を支持している!と配信されてしまう可能性って、ないわけじゃないでしょう。実際、カタルーニャ旗の掲示は罰金騒ぎになっている。====ThisIsTheErrorMessege====結局、この件はビクトルがにこやかにスペイン国旗にサインをする写真が公開されたことで「スペイン国旗で問題なし」で一件落着となった。

この件でぼくが恐かったのは、トリガーになった当該の呟きには「カタルーニャ旗を掲げよう」とは書いてなかったこと。「スペイン国旗でいいのか心配だ」とだけ。ぼくが確認した限りではそうだった。だから、その一文から「スペイン国旗じゃなくてカタルーニャ旗だ」と岐阜サポの誰かが判断し実行してしまい、それが厄介な案件になったとしても「カタルーニャ旗を掲げる判断をしたのは岐阜サポだ」となって、トリガーの人はこの問題から外れることが出来る。繰り返すが、その呟きをした人が岐阜サポを遠隔操作的に使って陰謀を仕掛けた政治活動家だとは思っていない。だけど、遠隔操作的な陰謀に利用できるスキームだというのが、結構怖かったわけさ。

それからしばらくして、どこかの国の国会議員さんが売名行為で(でええええええい、そうに決まってるわ!(笑))浦和vsドルトムントの試合について挑発的な呟きを行い、浦和サポのみならず現役プロサッカー選手まで脊髄反射で参戦したドロドロの罵り合いになったのを読んで、なんだかなあ……と。炎上マーケティングに『焼身自殺型』と『放火型』の他に、相手を燃やして自分も燃えてトクをする『自爆テロ型』ってのもあるんだなあ、と。こんなぼく自身もそういうテロの片棒を担ぐ可能性もあるわけだし、どこかにECCS====ThisIsTheErrorMessege====は用意しておかなくっちゃ。


でも、現役プロサッカー選手も含めてなんでネット経由だとこんなに脊髄反射してしまうんだろう?との疑問に、なんとなく自分の中では答は出ていたのだけど、それを言語化出来ないでいた。そんな時に目にしたのが、今日(2017年7月21日)のグーグル先生だ。マーシャル・マクルーハン?

Wikipeってみると、メディア論の大家だそうで。そこにこんな文面があった。
「テクノロジーやメディアは人間の身体の『拡張』である」
これこれ、これじゃん。

『攻殻機動隊』で描かれているのはその「拡張」の極端例(というか『攻殻』自体がこの論にインスパイアされてるとしか思えない)だけど、その入口の扉は少し開いた、ということなのかも。つまり、ネット(SNS)というメディアは人間の身体(五感)をある程度スルーして、よりゴーストに近いところで作用する。だけど、人間の身体の進化はまだ五感をすべて経由する地点で止まっていて、====ThisIsTheErrorMessege====技術がそこをワープした。だから喜怒哀楽がすぐに起動する。してしまう。その仕組みに気づいた者が気づかない者をコントロールして社会に影響を及ぼし始める。うーん、まさに『攻殻』じゃん。
今回の国会議員さんの仕掛けもその仕組みの存在に気づいていれば回避できただろうし、気づいていなければ岐阜のゴール裏でカタルーニャの旗が振られる事態が起きたかもしれない。

岐阜隊の話・その2 京都戦と広島戦

まず、11試合ぶりの勝利となった京都戦。この試合はやっぱり京都のアシストなしではこうはならなかった(苦笑)。試合後にいつもの正面広場でいつもの岐阜サポと目があったら同時に「ゆるっ!」と叫んでしまうような京都の緩さ。最前線の田中さんが最前線でカラダを張ってたけれどまさにそれだけしかしなくって、おまけに中盤もガス欠を恐れてかほとんどプレスに来なかったもんだから、これまで戸塚さんを初め大勢のDAZN解説者が言っていた岐阜はもっと敵陣深くでパスまわしが出来たら」が実現。特に後半開始早々の大本のゴールは、左から右に綺麗にボールが動いて最後に大本がフリーという、ホントにラグビーのライン攻撃のよう。ウンゴルさん緊急来日となった決勝点も、ゴールエリア前まで難波さんが入ってきているからウンゴルさんが現れるのであって。
というわけだから、京都戦で「岐阜の攻撃サッカー、ついに開眼!」なんて気分にはまったくなれなかった。もっとも、ザスパと釜玉が揃って停滞してくれてるんで残留ラインまで勝ち点13差。直接対決をどっちも落とすとかになるとまた厄介だけど、J3では秋田のトモヒロ====ThisIsTheErrorMessege====岐阜を落とすまいと頑張ってくれている(嘘)====ThisIsTheErrorMessege====んで、残留はなんとかなりそうかな。

天皇杯・広島戦。痛苦な自己批判とともにカムアウトするね。正直、試合前は「なんとかなるんじゃないか」と思ってた。実際、前半は向こうが5バックでノープレスだったこともあってやりたい放題に近かった。でも、そのやりたい放題で1点、なんだよね。後半、広島が4バックにしてプレス掛け出すとすぐにエネルギーを奪われて、一気に2点を奪われると広島はまた5バックのプレスつきで蓋をする。
かつて、電装サポをやってた頃にコール組の忘年会に呼ばれたことがあって、そこに選手が顔を出してくれたんで質問したことがある。「よくサッカーの中継で『先制点が大事ですよねえ』って言うけど、そんなの当たり前なんじゃないか?」って。するとその選手は「必ずしも先制点は必要ない。前半は0-1で問題ない。後半に2点奪えるようにサッカーを変えれば勝てる」というような返答をしてくれて、眼のウロコが全部剥がれ落ちたんだよな。この試合の広島はまさにそれだった。器の違いを見せつけられたよ。スコア的にも内容的にも“接戦”に見える“完敗”だったと思う。

宇都宮さんの本について

買いましたよ、『J2&J3フットボール漫遊記』(以下「漫遊記」)。最初に公開されたのが長良川のバックスタンドの写真だったので、これはこれは『岐大通』が本に載ってしまうのか?====ThisIsTheErrorMessege====と思ったけれど、そんなことはなかった(笑)。

で、本の感想ですけど、申し訳ないけど『サッカーおくのほそ道』(以下「ほそ道」)よりお勧め出来ないのは動かないかな。まあ、「ほそ道」はサッカー本大賞を受賞するくらいの著作ですから。

前向上で「J2独自の発展を遂げたサポーター文化」と煽っている。それはOKだけど、本文ではその「サポーター文化」にあまり触れていない。書かれているのは、取材時期におけるそれぞれのクラブあるいはその周囲のそれぞれの事情。サポだったり行政だったり。「サポーター文化」は関係ないじゃん。でも、「J2独自の発展を遂げたサポーター文化」はどのように醸成されたのかを考えると、実は「漫遊記」ではその点に触りようがないというのがわかる。「J2独自の文化」を造っているのはそれぞれマイクラブがあるサポだ。「J2サポ」ではなく「J2にマイクラブがあるサポ」だ。J2リーグが好きでやってるわけではなく、それぞれのサポのそれぞれの“マイクラブ愛”がミックスされて外からは「J2愛」的なモノに見えるに過ぎない。菊の花とか、サンゴ礁みたいな感じ。もちろん、それぞれの事情はそれはそれは面白いけれど、J2・J3クラブなわけだからクラブ事情の統一フォーマットのようなものはある。「ほそ道」で語られていた社会人クラブはお構いなしのところも多いから、そのあたりを知らない皆さんが興味を持つのもわかるけど、J2・J3だとちょっと弱いよね。

もともとのテキストが「読み切り型」なので、各章の書き出しがだいたい似たような文体なんだよね。ネット掲載時は冒頭文で「これから「漫遊記」始まるよ!」と読者もスイッチが入るからいいんだけど、こうして書籍でまとめるなら手を入れてほしかった。ライターの皆さん、そういう“プラットフォームの違い”は気にしないのかなあ。

「ほそ道」と「漫遊記」の両方に出てくるクラブがZと赤福。Zについては「ほそ道」が08年で「漫遊記」が15年だから事情もだいぶ異なっているけれど、赤福は「ほそ道」が12年で「漫遊記」が14年。たった2年のラグしかない。赤福がどう変わり、著者の視座はどう変わったのか。ここからわかるかも?と読み比べてみた。

「ほそ道」の赤福は東北リーグ1部で、震災をトリガーとする数多くの災難と向き合う話。「漫遊記」の赤福は、初の浜通り開催試合をきっかけに話を展開。で、「ほそ道」と「漫遊記」のどちらにも出てきたキーワードが『普通のクラブ』だ。さて、宇都宮さんはどうなれば赤福は『普通のクラブ』になると思っているのだろう。ぼくは、J3に加盟した時点で赤福は『普通のクラブ』になっていると思うんだけどね。

ダラダラと書いちゃったけど、「漫遊記」はJ2とJ3を分けて出すべきだったと思うんだ。J3だけ出すという選択はむずかしかったのかな。いくら前向上で「J2は違う」と言っても、J1の延長で語れる部分は少なくない====ThisIsTheErrorMessege====し、リーグとしてクセがあるのはJ3の方じゃないの?と思うのさ。

今回は版元がカンゼンじゃないのでこれまでの宇都宮さんの本と装幀とかも比べてみたけれど、うーむ……カンゼンの方がよかったなあ。というか、今回の本は制作にそんなにおカネかけてないよね。写真ページをまとめちゃってるし。


最後に、ここは声を大にして。
セレッソの項目、対金沢戦でセレッソは負けるのだけど

「ホームで格下相手に」って、どういうことかな?

宇都宮さんにおける「格」の定義は、一度どこかできっちり明らかにしてほしい。これ、結構強い要望。

で、鋳造のお勧めは……(大ステマ)

というわけなんで、もしこの「漫遊記」をきっかけに「J2独自の発展を遂げたサポーター文化」を知りたいと思った方には、通称『J2本』====ThisIsTheErrorMessege====がお勧めです(笑)。各クラブのサポが書いたものをまとめた同人誌なんだけど、サポ目線での『いまのJ2』が見える。まさに「J2独自の発展を遂げたサポーター文化」に接するのに相応しいものだ。
ジャーナリスティックな視点は少ない。でも、実はそこがポイントでもあって、サポはジャーナリスティックにサッカーを愉しんでいるわけではないし、「J2を盛り上げよう!」との意気込みで盛り上げているわけでもない。これ、アンダーカテゴリー系でよく出てくる「**リーグを盛り上げよう!」というテーゼにも言えることなんだけど、盛り上がっているリーグがあったとしてもそれは「リーグを盛り上げよう」としてやってるわけじゃなくて、リーグに所属するチームを盛り上げようするサポ達が『スタンドアローン・コンプレックス』を形成しているだけ。だから、そのコンプレックス(複合体)に接することが出来る「J2本」は「漫遊記」よりお勧めだ、と思うわけ。

この『J2本』、“夏コミ”では8月12日(土)に東3ホール ウ-37a、サークル名『BRADDY VOICE』で販売します。私の『ちゅうぞうのおしごと!』の委託販売もここで行いますので、是非とも『J2本』ご購入のついでに、鋳造の在庫いっぱい夢いっぱいの解消にもご協力くだされ(笑)。

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