吉田鋳造総合研究所
鋳造所長雑文録
2011/12/21◆『いまそこにないサッカー』を愛するということ
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今年のサッカー観戦が99試合。結構観ているようで、でも47都道府県の社会人チーム観戦コンプと地域リーグ観戦コンプと岐阜隊ホーム戦コンプを中心にしてたので、実はあまり数を稼いでいなかったのだなあ…と思ったり。豊田スタジアムでクラブ・ワールドカップが開かれていて、開催国代表の柏が結構がんばってるのもあって、だったら水曜の勤務を早上がりで仕掛ければ観に行けるなあ……と。


2011年12月14日

豊田市駅に着いたのは第1試合開始の40分くらい前だ。エスペランサ・チュニスの武装隊が歌いながら駅からスタジアムに向かう。駅近くのコンビニ前で呑み喰いしたり歌ったりしてるのはサントス武装隊。第2試合の開始まで3時間以上もあるのに、スイッチオンでしょうか。
スタジアム前の売店でプログラムを購入する。知らなかったんだけど、メヒコのクラブはリベルタドーレスにも参加してる====ThisIsTheErrorMessege====んだね。売店まわりでは記念撮影をする皆さん。5位決定戦で対戦するエスペランサ・ユニの男性とモンテレー・ユニの女性が仲良く……なんてシーンもある。もちろん、友好なのは試合が始まるまでなんだろうけど(笑)。


5位決定戦
Monterrey 3-2 Esperance Tunis

モンテレー・サポは南側ゴール裏に陣取り、一方のエスペランサ・サポはバックスタンドだけど同じ南側に。なもんで、両チームのサポを近くで観れて愉しかった。序盤はエスペランサが攻める時間が長かったし、縦1本で抜け出したFWが身体能力で抜け出して決めてエスペランサが先制はするのだけど、おくだ隊長の形容を借りれば開始10分くらいでモンテレー攻撃陣はエスペランサ右SBのパンツを脱がせてしまった(笑)。あまりにやられ過ぎ。前半のうちに左サイドからのクロス2本で逆転してしまうと、後半開始早々には今度は右からのクロスをファーで折り返してヘッドで押し込み3点目。エスペランサ・サポは元気消失。それでも、PKで1点差にしてからは元気も戻ってきて。どちらも「世界5位」を目指す手抜きのない戦いだった。結局、3-2でモンテレーが逃げ切り。アフリカ色とアラブ色がいい感じでブレンドされたエスペランサのチャントは良かったんだけどね。岐阜隊が採用している歌も披露してくれて、内心かなり盛り上がってしまったけど、サッカーはモンテレーの方が好みだった。

さて、ぼくの席は南側のゴール裏席、サントス族の拠点だ。第1試合の途中からバナーをかざしての記念撮影などで忙しい。のはわかるけど、試合中にサントスのチャントを朗々と歌うグループもあった……ような気がする(苦笑)。試合を観ている皆さんは、モンテレーについているひとが多そうなのは、やはりメヒコと南米の“近さ”のなせる業だろうか……と思ってると、第1試合から残ってたエスペランサのサポもサントスにつくことに決めたようで、バナーを掲げて盛り上がっている。おいおい、どうする?南側のゴール裏から観る限りだけど、開催国代表・柏レイソルはアウェー感満載だ(笑)。


準決勝
Kashiwa 1-3 Santos

試合開始前からスイッチ入ってたと思われたサントス族だったけど、ぼくが甘かった。試合が始まると、いきなりギアを上げての大応援。奴らが本気出すとこうなるのね。やっぱりネイマールは彼らの中でも別格のようで、彼がボールを持っただけで反応が違う。

先制点はそのネイマールが技術の違いをみせつけてくれた。サントス族は大爆発。柏相手にゴールしたぐらいでそんなに喜ばなくたって……なんて捻じ曲がったことを一瞬思ってしまったけど、彼らは相手がどこだろうと叩き潰す!という感じなのだろう。柏のCKでジョルジ・ワグネルがコーナーポストに向かう時には激しいブーイングを浴びせてたし、2-0からセットプレーで柏に1点返された時は、ポルトガル語の意味がまったくわからないぼくでもこれはかなり汚い表現で罵ってるんだろうなあ…と思ってしまうような不満をぶつけていた。
菅野がマジで一歩も動けないFKを右隅に入れられて3-1。その後、柏も得点機会はあるのだけど決められず。でも、柏は選手もサポも幸せだよ。こんなサントスとガチの公式戦が出来たんだもん。もしNGや吹田がこの大会に出ていたらサントスとここまでの戦いが出来ただろうか?と考える。なんとなくだけど、NGや吹田が今年のJ1を制したとしても、それは“ピーク”での優勝。柏は“成長途上”でJ1を制し、そしてこのCWCでまた成長したのではないか。柏はこれでまた強くなる。そんな気がした。


で、この時にサントスのサッカーを観て思ったことをCWC決勝戦をテレビで視て再確認した次第。『いまそこにないサッカーを愛する』方々について、だ。

ホンダロック・サポーターのショッカー総統氏====ThisIsTheErrorMessege====の至言である『いまそこにあるサッカーを愛せ』は、主にノンリーグをサポート・観戦する者のテーゼの一つとなっている。もちろん、自分の環境に一番近い「いまそこにあるサッカー」がレイソルやグランパスやアントラーズやレッズだというひとも当たり前のようにいるはずなんで、このテーゼが下部リーグのみに有効というわけではないのだけど。で、この総統氏の表現を借りれば、テレビでプレミアシップやセリエAやリーガ・エスパニョーラといった欧州サッカーを視て愉しみ、日本サッカーの現場には目もくれない方々は『いまそこにないサッカーを愛している』ということになる。

どちらが善でどちらが悪だという話ではない。ぼく自身は「テレビでW杯より現場で地域リーグ」という感覚で動く人間だけど、逆に「現場でヘタクソなサッカーよりテレビでハイレベルの内容」という感覚で動く方もいるのは当然で、そしてCWC準決勝の柏×サントスでも感じたそれは、決勝においてはその感覚が圧倒的な説得力を持つ内容だった。「ラーメン二郎がラーメンではなく“二郎という食べ物”なのと同様に、バルサがやってたのは“バルサというスポーツ”だ」という言説をtwitterで読んだけど、納得。
とはいえ、実は選手のやってることは当たり前だけど“サッカー”だ(笑)。その点は地域リーグもバルセロナも変わらない。違うのは基本技術の徹底的な正確さ、その正確な技術ゆえにプレーの選択肢が桁外れに多いこと、そして桁外れの選択肢からのチームとしての選択判断の速さ。桁外れの選択肢を選手全員が共有できているから、基本的に「プレーが合わなかった」ということがほとんどない。こりゃあ、『いまそこにないサッカーを愛する』方々を『いまそこにあるサッカーの現場』に引っ張り出すのは容易ではない。

日本サッカーでサポーター活動をしている方々は「現場で『愛するクラブと喜怒哀楽を共有する』愉しみは、対象としているサッカーのレベルなんか無関係!」と言い切るだろう。繰り返すが、どちらが善でどちらが悪だという話ではない。実は、『いまそこにあるサッカーを愛する』方々と『いまそこにないサッカーを愛する』方々は、「サッカーが好きだ」という部分以外に共通点を持っていないのではないか?という気がする。釣り師とスキューバ・ダイバーが「海が好きだ」という部分以外に共通点を持ってない====ThisIsTheErrorMessege====ように。もちろん、サッカーについては両者を並行して一緒に愉しむ層が多いのも事実だけどね。釣りもスキューバ・ダイビングも好きって方がどのくらいいるのかは、わからない。

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