吉田鋳造総合研究所
鋳造所長雑文録
2008/12/05◆最終節の前日にアラビア半島の国境線のことなど
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ぼくの大好きなサイトである『世界飛び地領土研究会』====ThisIsTheErrorMessege====に、「かつてアラビア半島に国境線が一部しか描かれていなかった理由」====ThisIsTheErrorMessege====が書いてある。現在は石油利権が関係するとか地域の安定のためとかで国境線は決まったらしいが、かつては海岸線から少しの部分しか書かれていなかった。ぼくはこどもの頃に百科事典附属の世界地図を視ながら「どうしてそんなことでうまくいくのだろう」と疑問だったのだけど、このサイトでようやく解決した。遊牧民は国境線など関係なしに渡り歩いて生活している。だけど、遊牧民はどの首長に属しているかはみんな決まっていた。日本は地縁(ムラ)社会だから支配者は土地を抑えるが、こちらでは血縁社会だから支配者は部族を抑えるということ。なるほど。

血縁社会。
そうか、これか。


FC岐阜というクラブが出来る前の話だけど、ぼくは天皇杯岐阜県決勝の長良川メドウで、近くに座っていた協会関係者から「FC岐阜構想」を聞いている。曰く、「県内の高校生の受け皿がない。また、国体成年の部に代表を送り込むことも出来ない。だから協会主導でFC岐阜を立ち上げる。目標は東海リーグ」。東海2部に昇格するまでは、そのままの路線で進んでいた。そこに、森山泰行が加入し、FC岐阜は「Jを目指すクラブ」に急速にシフトしていく。元『J』の選手を大量補強。クラブ運営においても、今西和男というとんでもないビッグネームの獲得に成功。3年でJにまで駆け上がった。

でも、なんで今西和男という人物は岐阜にいるのだろう。
岐阜に縁があるとは聴いていない。07年のFC岐阜イヤーブックを開いてみた。そこには、本人のコメントで「森山の存在が大きかった」との一文があった。

これだ。

今年1年『J』の舞台で戦う岐阜隊を見てきて、ずっと感じてきた違和感。いつまでもつかないスポンサー。勝っても負けても、盛り上がるでもへこむでもなく、ただなんとなく過ぎていく。いわば“よそ事”のような街の雰囲気。でも、それは何も今年だけのことではなく、昨年のJFL時代も感じていたことだった。「『J』に行けば変わるだろう」とぼくもほんのり思っていた。でも、変わらなかった。「あるのはいいけれど、なくなったって、別に。」
なぜだろう。その答えがこれだ。なぜ、こんなことに気づかなかったのだろう。


FC岐阜は血縁で成立しているのだ。


だから今西さんは岐阜に来たのだ。だから、森山と同級生だった地元企業の社長が中心になって動いたのだ。その彼が動いた時に、地元財界が大きく支援する動きを見せなかったのだ。FC岐阜は、FC森山だったのだ。

だったら、岐阜をホームタウンにする必要などない。というか、そもそもホームタウンという概念すら必要ない。もちろん、森山泰行ゆかりの地だから、ホームゲームの大半は岐阜で行われるだろうけど、それ以外にも森山と縁の深い街で試合をすればいい。文字通りの“ジプシー”====ThisIsTheErrorMessege====サッカークラブ。
しかし、日本は地縁社会。『J』だって例外ではない。というか、地縁社会の象徴と言ってもいい。なにせ「ホームタウン制」だ。だから、FC岐阜は血縁のクラブから地縁のクラブにシフトする努力が必要だった。ところが、そんな努力を求められたクラブは他にない。そりゃコンサドーレだってアビスパだって、そもそもその街に地縁はない“引っ越し”クラブ。しかし、彼らは縁のない札幌や福岡が「呼んだ」クラブだ。自分たちで呼んでおいて「ウチのクラブじゃねえし」ともいかないだろう。
FC岐阜は、岐阜に地縁を持たない。呼んだクラブでもない。岐阜という街に「できちゃった」クラブだ。経営危機だなんだと言っても、言われた側は「だから、どうしろって?」という気分だろう。


では、どのようにFC岐阜を地縁のクラブにするのか。誰が動くべきなのか。
動くべき人物はひとりしかいない。森山泰行。

あなたがFC岐阜をここまでにしたんです。その功績は称賛されこそすれ、非難されるべきものではない。しかし、「夢を語れば地域はついてくる」という発想が誤算だった。あなた一人でこのクラブを支えていけるのなら、文字通り『FC森山』で構わないのだけど、そうではない以上「ここまでにしたクラブを地元で引き受けて下さい」と動くべきは、あなたではないのか。

ただ、実際のところ彼がそのように動くとは思えない。動く気があるのなら、これだけの経営危機が表面化する前に動いているはずだ。なら、残された者で“ハシゴをはずされた”FC岐阜を地縁のものとするしかない。


明日の鳥栖戦で、森山泰行は現役を引退する。ぼくの記憶では彼はすでに取締役を降りているはずで、間違いなければこれで公式にはFC岐阜とのつながりがなくなることになる。これを、ピンチととるか、チャンスととるか。ぼくはチャンスだと思いたい。血縁の中心者が降りるのだ。血縁ではない、地縁としてのFC岐阜を構築していく。日本語としての『リストラ』ではない、『Re_Structuring』のチャンスだと。

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