cyic.co.uk 吉田鋳造総合研究所
鋳造所長雑文録
2007/07/24◆ドーナツの穴としてのFC岐阜
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長良川に向かうべく自宅を出たのは午後3時半。バス停まではチャリだなと思ったところ、なぜかキーホルダーがはずれていて、鍵がないっ!これはまずいと急ぎ足でバス停まで行き、なんとか間に合ってバスで岐阜駅へ。すると、降りる時に隣の席の小学生から「携帯落ちてますよ」との指摘。ありゃ、根付が切れてしまっている。慌てて携帯を鷲掴みにバスを降りて1分後、車内に傘を忘れたことに気づいた。どうも流れがよくない。非常によくない。


現地着は開門の20分前。サポ連の臨時ミーティングも既に終わっていた。MDP印刷担当のささたく氏は「800枚を用意した」とのこと。うーむ、強気だ。

開門。岐阜県選管さんも投票呼びかけの団扇を配っている。ちゃんと緑地のデザインで、わかってらっしゃる。と思ったのもつかの間、その後ろで手を振る選挙マスコットは黄色と青の組合せではないか!栃木カラーではないか!さては貴様、回し者だな!入場する岐阜サポにMDPを配りながら「入る際にはあのマスコットに一発メンチ切ってください」と、冗談。栃木サポさんは50人くらいか。ユニ着た初老のご夫婦もいて、いい感じ。しかし、「これは明らかに敵武装兵士だな」という方々はココロはすでに戦闘態勢のご様子。ここは戦場。800枚のMDPは75分程度で捌けた。岐阜サポ有志の皆さん、ご協力感謝。これからもよろしくです。
この日、いつもより売店が増えていて、1本150円の鶏串は大変美味だった。試合開始前とハーフタイムのチアリーディングダンスもよかったですよ。またパフォーマンス演じてくださいね。

と、平和な雑文は、ここまで。


試合は0-2で栃木。いやあ、監督変わるとここまでサッカー変わるか!と感心を通り越して感動するくらい、栃木のサッカーが足利と違った。足利で岐阜の両サイドを切り裂いた高秀に永井がいない。サブにもいない。唯一、茅島がサブ登録。右に只木で左に米田。両翼にいるのが香車から銀将に変わったという印象。じわじわと右サイドで圧力をかけて左サイドにスペースを作り、そこで勝負。岐阜は右サイドの守りが弱いというのが新任監督にもバレバレであることを知らしめた。2失点はこんな感じ。では攻撃は?
これまで、「岐阜隊には攻撃時の約束事がない」とよく言われていた。でも、この試合を思い返してみると、実はチームとしての約束事はキチンとしているのではないか?選手はそれを一生懸命に守っているのではないか?という気持ちになってきた。

「岐阜隊の攻撃時の約束事」として、ぼくが気づいたのは以下の4点。

  1. “縦の駆け引き”をしてはいけない。
  2. サイドチェンジをしてはいけない。
  3. ミドルを打ってはいけない。
  4. FWはスペースを狙ってはいけない。

前半に象徴的だとぼくが感じたシーンがある。栃木が攻め上がっている中でボールカットでカウンターのチャンス。中盤に障害はなく、DFラインの前に両FW、櫻田と片桐。相手DFラインはかなり高く、スルーパスが通ればGKと1対1が作れる状況に見えた。この時、片桐はゴールを背にした状態で両腕を前に伸ばし、ボール保持者に「足下に出せ」の合図を送った。それは、ぼくの中である“気持ち”が消去された瞬間だった。「片桐に期待する」という気持ちだ。片桐君、たくさんボールに触れて嬉しいよね。来年からはフリースタイルフットボーラーに転向してみたらどうだろう。

どうしてこうなってしまったのだろう。一番簡単な答は「松永英機が壊した」ということになるが、こうも簡単にチームを壊せるというのはそれはそれですごい才能。ぼくはそうじゃないと思っている。実は、チームは開幕の頃から壊れていたんじゃないか。そんなバラバラなチームを束ねる唯一のポイントが「戸塚哲也のカリスマ性」であり、その唯一の支えがはずれたもんで一気に分解が進んだのではないか。もしこの仮説が正しいとするなら、松永英機には戸塚哲也を上回る人心掌握能力が求められることになるが。


試合が終わって、選手がG裏に挨拶。ブーイングは起きなかったようだ。一方、メインスタンドホーム寄りの荒み方は相当なものだった。競輪場でよく聴くタイプの、ダミ声親父の罵声の数々。でも、ぼくにはG裏よりメイン側の反応の方が妥当に思えた。少なくとも、この試合に関しては。
一方の栃木サポさん、12試合ぶりの勝利に歓喜。当然です。会心の勝利ですからね。会場からも「県民の歌」を歌いながら堂々の退出。ああ、ウチらも足利であそこまでやった方がよかったのかな、それが彼らにとっての“礼儀”だったのかな、なんて。

岐阜駅前に戻って、サポ組と話をする。試合終了後にG裏から「お前ら、もっとやれるだろ!」と声を飛ばしたというサポもいた。この声に対しては2種類の答がある。

  • もっとやれるのに、やってない。
  • 以前はやれたが、もうやれない。

でも、これは村上春樹の表現====ThisIsTheErrorMessege====を借りれば『ドーナツの穴』のようなものなのかもしれない。ドーナツの穴が存在なのか空白なのかはあくまで形而上学的問題であり、それでドーナツの味が変わるわけではない。まずいドーナツはまずいのだ。


翌日、ぼくは滋賀県守山市で佐川急便とガイナーレ鳥取の試合を観た。鳥取サポには1失点目について言い分はあると思うけど、試合としては2-0といういたって妥当なスコアで佐川が勝利。で、一緒に観ていた岐阜サポと「う、美しい………」とため息をついてしまったのは、佐川2点目のカウンター。
自陣中央でカットし、その前にいる中盤右サイドの嶋田へ渡す。受けた嶋田はトップスピードで中央を駆け上がる。ようやく鳥取DFが追いついたのは鳥取陣ペナルティサークル近く。ここで嶋田は止まって追走してきた中村にボールを戻すと、中村はすぐさま左前に流す。そこには同じくトップスピードで走り込んできた左SBの旗手。フリーでゴール前にクロスを上げると、ゴールエリアのファーサイドに詰めてスライディングボレーを決めたのはこれまたトップスピードで走り込んで来た右SBの高橋だった。この攻撃を岐阜の選手に当てはめてみよう。

大輔がトップスピードで中央を爆走→追走してきた片桐に戻す→片桐はすぐさま左前に→走り込んだ直起がフリーでクロス→ソンホがGエリアまで走り込んでボレー

これを描くには、かなりの映像加工と多少のヤラセが要る。

この試合、観客は800人かそこらだったと思う。でも、岐阜より佐川の方が間違いなく、お金を払って観る価値のあるサッカーをやっていたし、岐阜より鳥取の方が間違いなく、お金を払って観る価値のあるサッカーをやっていた。佐川の『強さ』、鳥取の『ひたむきさ』。自分たちの“商品”が何なのかわかっているように見えた。


それでも、ぼくは次の岐阜のホーム戦は行けそうなので行くだろうし、MDPも配る予定。長良川の雰囲気は好きだ。MDPを受け取ってくれる、岐阜を応援する人たちの表情が好きだ。勤務の関係で今後はホーム戦に行ける機会が少なくなるから配布はサポ仲間にお願いすることになるけど、今年はMDPを作り続けるつもり。
そうそう、MDPを今西GMが受け取ってくれた。彼は受け取るとその場で表面を5分近くもかけて一言一句読み逃すまいといった感じで読んでいた。サポの声が気になるのかな。次回は、もう少しネガティブな声を載せた方がいいのかも。

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