吉田鋳造総合研究所
鋳造所長雑文録
2007/04/04◆『アリエスの戦士たち』復活の序章
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諸事情により、4週連続の東京帰省。と言っても、せめて日曜の午後ぐらいは観戦活動を…と思っていたところ、東京都社会人チャンピオンシップ====ThisIsTheErrorMessege====の準決勝が未観戦ピッチの町田小野路であるではないか。対戦カードは、第1試合が11時から佐川コンピュータシステムvs町田ゼルビア、第2試合が13時半からTFSC====ThisIsTheErrorMessege====vsエリース東京====ThisIsTheErrorMessege====。第2試合なら、なんとかなりそう。


十数年ぶりに橋本から京王相模原線に乗る。こどもの頃は京王多摩川までしか線路がなかった。その頃の車内掲示の路線図には橋本を過ぎて津久井湖の近くの相模中野まで延長の計画だったはずなんだけど、どうなってるんだろね。====ThisIsTheErrorMessege====その当時は現在の南大沢のあたりなんか畑と丘陵しかないいわゆる“里山の風景”でしかなくて、変わったなあ…とため息をついていたら多摩センターについてしまった。

多摩センターから鶴川行のバスに乗る。鶴川行は2系統あって、どちらに乗っても最寄バス停に着くことが出来る。時間にも余裕があるけど、まあ先に出る方でとバス停に行ってみると長蛇の列が出来ていてあっさり萎えてしまう。5分後に出る別系統のバス停へ。こう書くとバスは頻発しているように思えるけど、実はどちらの系統もそれぞれ時間1本しか運行されてないのだ。うーむ、実に非効率。で、やって来たバスはいまや無形文化財級の前払い申告式====ThisIsTheErrorMessege====で驚いてしまった。まだあるんだねえ。

五反田の交差点を曲がるまではずっとニュータウンの景色で、橋曲がった先は昔ながらの“武蔵野の里山”。まだ残っているんだね、この景色。最寄バス停の下堤で降りる。競技場への上り坂は桜が見頃で、いい感じ。
上り坂の途中で、町田サポのコールが聴こえて来た。ちょうど試合が終わる頃だ。コールの元気さから判断すると、無事に勝ち上がったと想起しうる。果たして、サポさんに確認すると3-0とのことだった。まあ、順当といったところか。
しかしまあ……とため息が出てくるピッチである。観戦用のスタンドがないのはまあ許容範囲として、ほとんど芝がないではないか。最初からクレーとして整備されているならそれはそれで理解も出来るが…。大きく回りこんで管理棟らしき建物の横から階段を下りると、ピクニックで使うような木製のテーブルと椅子があった。しょうがない、ここで観るか。


第2試合。町田サポは数人を残していなくなって、あとは関係者と物好きが数名。ちょうど9ヵ月先、元日の国立は天竺より遠い彼方の予選、TFSCとエリースの試合。リーグカテゴリーでは4部と6部。2つ差があれば大抵は「手の出しようがない」ほどの差となって試合内容に現れる。

ところが、互角なのです。ちゃんとエリースもゴール前に迫れるし、相手の攻撃もちゃんと中盤でつぶせている。それを支えているのがGKのコーチング。これがもう、ものすごいデカい声で指示出しまくり。で、またその指示が具体的で的確なのよ。
「バランス!」「ポジショニング!」ハイボールが来れば「競れ!ライン下げるな!下げるなーっ!」この辺は、まあいい。個人的に感銘を受けたのが「マーク変わってる!ヤマ!(相手)25番のポジション変わってるぞ!」また、エリースがDFラインでボールを奪い、縦に入れようとすると「はめられてる!はめられてるぞ!」要するに相手守備陣形は出来上がっていてわざとエリース中盤にフリーの選手を作っていて、深く考えずにそこにパスを入れると組織的に囲まれて高い位置でボールを奪われて速攻を喰らうと言っているのだ。6部のGKでここまで的確な指示が出せるコイツ、何者?
こういう時に頼りになるのが次元大介、じゃなくて情報通“無料試合のS”君。飛田給で緑×山形を観戦中のところにお邪魔します。エリースの1番て、だあれ?
「エリースの1番は毎年変わるからなあ…」と言いつつ調べてくれた彼から衝撃の情報が。この1番、城定和治だというではないか!

9チームで行われた第1回・新JFLで横河電機の正GKを勤め上げた男だ。その後アルエット熊本→鶴屋(ヴァンクール)と移籍。その彼が東京に戻ってきていたのだ。

的確な指示でチーム全体を操る城定だが、その彼が「ほあーっ!ほあぁーーっ!」と叫び出した時はいったい何が憑依したのだ====ThisIsTheErrorMessege====とたじろいだが、どうやら「フォアチェックに行け!」という意味だったらしい。あーびっくり。
そんな彼の指示でバランスを崩さずに2カテ上の相手と果敢に戦うエリース、右からのクロスに「りょーた」と呼ばれる6番がヘッドで競りつつ流し込んでエリース先制。そのまま互角で前半終了。しかし、いくら指示が的確とは言え、2カテ上の相手にこのサッカーをあと45分出来るのだろうか。


後半からはネット越しとはいえもっと俯瞰で見れるところから観ようと移動すると、ああやっぱりいました知人が。もっとも、先に「あ、やっぱり来た鋳造さん」と言われてしまったのだけど。横河武蔵野族の彼は当然だが1番が城定だということは知っていた。「お腹ぷっくりだけど、反射神経とかはさすがですねえ」とは彼の弁。
さて後半。城定の声はあまり響かず。カラータイマー点滅中か?そのせいかエリースは右サイドのスペースを再三突かれたりでピンチの連続。TFSCも2カテ上の意地がある。キチンと修正してきたのだ。FWが2枚のCBをひきつけておいて真中に出来たギャップにすっと2列目が入ってきてそこにスルーパス。大袈裟に形容すれば藤田俊哉の香り。左足アウトサイドで合わせると城定は一歩も動けなかった。これで同点。
となるとあとは一方的にTFSCペース…にもならないのだよなあ。どっちも同じ時間帯にエネルギー切れを起こしたか、バタバタと精度のないジャブの打ち合いのような様相に。城定のコーチングも少しずつ復活してきて、こりゃあ90分ではケリつかないかなあと思い始めた。帰りの新幹線の時間もあって、そうなると終了まで観戦はむずかしくなる。そんなぼくの願いが通じたか、エリースは後半ロスタイムにどうしようもなく中に入れた右からのクロスをGKが確保し損ね、ちょんと押し込んで勝ち越し。当然、TFSCのGKは激高するが即座に警告が出たところを見ると主審は「GKが確保していない」という判定に自信があったのだろうね。このまま2-1でエリースが勝利。来週は大井陸上で町田との予選決勝だ。もっとも、これはあくまで社会人予選。勝ったところでたどり着くのは最終予選の4強。====ThisIsTheErrorMessege====全国大会の椅子ははまだまだ遠い。


しかし、この内容でエリースは地域2部にいられないのか。もっとも、後半から一緒に観戦した知人によると、エリースにはチームワークではなく個人の役割を大事にする傾向があり、だからチーム全体で弱点を補うという思想に欠けるのだそうだ。それが悪い方に作用するとチームが分解してしまい、それが「1年で5部を下に通過する」事態を招いてしまったのではないか、と。なるほど。
でも、「チームワークではなく個人の役割を大事にする」というのは悪い考えではない。各々が自分の仕事を全うし、そこからチームプレーが生まれる。逆に言えば、チームプレーが出来上がるように個人のプレーをコーディネートする。そのコーディネーターとして最後尾から指示を飛ばし続けるのが城定だとするなら、エリースの復活は意外と早く訪れるかもしれない。関東社会人トーナメントの過酷さは知っているつもりだ。都1部で1位になったからといってすんなり勝ち上がれる大会ではない。それでも、今年のエリースには期待してしまう内容の試合だった。この日の内容なら、おそらく東海2部の下の方が相手なら余裕ですみざりーんしてしまうだろう。こういう新鮮な驚きがあるから、下のカテを行脚するのは愉しいのだ。

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