cyic.co.uk 吉田鋳造総合研究所
鋳造所長雑文録
2007/01/17◆土曜日の藤枝ネルソンと日曜日の藤枝ネルソン
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毎年、この時期には東海地域と九州地域で昇格トーナメントが行われる。昨年は発作して藤枝→沖縄とハシゴ。今年も鈴鹿→島原あるいはその逆とハシゴすれば観戦済ピッチを3つ増やすことが出来た。
にも関わらず、今回は土日とも鈴鹿に通うことにした理由は2つある。1つは、失礼ながら九州各県に出てくるクラブに食指を動かされなかったこと。もう一つは、藤枝ネルソンについての仮説を確認することだった。

4年前に同じ鈴鹿で行われた東海社会人で藤枝ネルソンを観た。土曜日の試合では、岐阜代表のフォレスタ関を圧倒する。この内容なら翌日も余裕で勝利して昇格を決めるだろうと思われたのだが、当直の関係で観戦出来なかった日曜の昇格決定戦でよもやの敗戦を喫する。昨年の東海社会人でも藤枝ネルソンを観た。やはり土曜日の試合、三重代表の伊賀MEWに3-2で勝利。1点差ではあるが、ショートパスを何本もつないで攻め込むスタイルで、内容的はもうやりたい放題といってもよかった。これはとても県リーグのレベルじゃない。これなら明日は鉄板だと思って翌日は九州各県を観に沖縄に行ったのだけど、日曜の決定戦はこれまた敗戦。
もしや、これは何かあるのではないか?とぼくが思ったとしても不思議ではあるまい。土曜日と日曜日の藤枝ネルソンを比べることで見えてくることがあるのではないか。これが島原に行かなかった理由。


土曜の朝。米原駅に用事があったので、朝7時過ぎに単車で自宅を出た。関ヶ原から巡見街道====ThisIsTheErrorMessege====をひたすら南下する。めっちゃくちゃ寒く、上石津のコンビニで使い捨てカイロを買って靴の中とグローブの中に貼った。これでなんとかなりそうだ。鈴鹿の会場に着いたのは開始の15分くらい前だった。
この日はメインで2試合、サブ4で2試合が行われる。目的が藤枝ネルソンの観戦なので、第1試合は当然サブ4へ。静岡県リーグ2位だけど、ぼくの知っている『土曜日の藤枝ネルソン』なら岐阜県1位の養老クラブぐらいチンチンにのしてしまうだろう。

しかし、この日のネルソンは昨年とは違っていた。ショートパスでつないで崩すスタイルは変わらないものの、圧倒するという感じはしない。藤枝ネルソンの攻撃の中心は小柄な中盤、8番の牧野。====ThisIsTheErrorMessege====彼から出てくるパスは、このクラスでは“器の違い”を見せつけている感じすらする。着実に得点を重ねて3-0とし、このまま粛々と勝ち抜けていくのかと思ったら、終了間際にセットプレーから2発喰らって最終的には3-2。昨年のMEW戦と同じだ。終了直後に監督が「ウチらしいな」と話していたのが印象に残った。らしいかどうかは別として、ぼくは藤枝ネルソンというクラブの欠点の1つがわかった気がした。後半30分近くなると全員一斉にバテて動けなくなってしまうのだ。

第2試合はメインで愛知県1位のFCゴールと三重県2位のM.I.E.ランポーレの試合を観る。ランポーレには昨年末に岐阜隊から高木成太と橋元圭一郎が移籍している。移籍後、成太はこの大会を最後に引退を決意した模様で、そのせいか岐阜サポが10人程度やって来ていた。ランポーレは三重県でなんとか2位を確保したのだそうで、そうなると結構苦戦するかもしれないといった危惧は試合が始まるとまったくの杞憂だった。さすがに元J1の成太は中盤の底で王様のごとく君臨して自在にパスを操る。FCゴールが前線とDFで文句を言い合うような状態では話にならない。4-0でランポーレの圧勝。これで翌日の決勝はトヨタ蹴球団×藤枝ネルソン、ヤマハ発動機×M.I.E.ランポーレの対戦となった。トヨタもヤマハも元は東海リーグ常連だった古豪。楽しみな2試合になった。


日曜の朝。再び、関が原から巡見街道を南下する。前日の帰り道は鈴鹿→桑名→長良川右岸にしたのだけど、国道1号は道も狭く交通量も多く走りにくかったので、多少遠回りでも快適に走れるルート選択にしたのだ。果たして、この日も到着は開始の10分くらい前。完璧だ。
決勝は2試合ともメインで行われる。第1試合は三重テレビで生放送される。解説は岐阜隊の戸塚監督。錚々たる体制だが、すべては伊勢ペルソナが勝ちあがってくることを想定してのもの。第2試合に三重県勢が出てくるので、もしや試合の順序を変えるのではないか?と思っていたのだけど、そのままだった。

さて、今回ぼくが九州各県を見送った最大の理由、『日曜日の藤枝ネルソン』はいかがなものか。もしやぼくの危惧は的中したのではないか?と思ったのは、キーパーソンと読んでいた牧野がスタメンにいないことだった。岐阜隊から助っ人の津島もいない。牧野がいないのはなぜだろう。昨日の活躍を考えたら「いるのに使わない」というのは考えられない。このクラスのクラブだと「仕事で出れない」というのも日常茶飯だからなあ。しかし、ネルソンは前半3分にさっくり先制。お、ちゃんと選手は喜んでいる。これは上がる気はあると思っていいのかな。ところがその数分後に左サイドからゴール正面で張るトヨタFWに速いパスを通されて同点。あれ、これは乱打戦になるのかも。しかしその後は試合が膠着する。
後半も半ばを過ぎると、明らかにネルソンの動きが悪くなる。昨日と同じだ。それと同時に、相手にまったくプレスをかけられなくなり、トヨタがボールを持つとずるずるとラインが下がっていく。攻撃時の惚れ惚れするパスワークと、あまりに淡泊な守備、そしてスタミナ切れの早さ。これが藤枝ネルソンというクラブの特徴なのかもしれない。だから土日連戦の東海社会人トーナメントになると、2試合目はスタミナ切れも早くなってやられてしまうのではないか。残り10分あたりで牧野を投入。なんだ、いるじゃん。
そして後半35分、左からのクロスをGKがファンブルしてしまい、詰めていたFWにあっさり押し込まれてトヨタ勝ち越し。これでネルソンの選手はある程度“切れて”しまったようだ。ロスタイム近くにもだめ押しの3点目を入れられて試合は決した。最後まで「らしい」ままで藤枝ネルソンは舞台を降りた。トヨタ蹴球団、3年ぶりの地域リーグ復帰。大喜びするトヨタの選手達、その横で藤枝ネルソンの選手達は悔しさを表すこともなく、妙にサバサバしていたのが気になった。

第2試合。ヤマハ発動機とM.I.E.ランポーレの試合。高木成太、最後の試合。花束を用意しているひとも多い。この日もやって来ていた岐阜サポ連中、太鼓まで持ってきているヤツもいるではないか。ペルソナと違ってランポーレにはまだサポ団もないので特に問題はないのだが、太鼓隊も選手の名前もよく把握していないのでおとなしめ。試合の方も点が動かずおとなしめ。とは言うモノの、内容的には一進一退で第1試合より愉しめた。ハーフタイムで周囲の岐阜組とここまでの戦況分析をしたのだけど、「ランポーレ押し気味」「ヤマハが相手に持たせて試合をコントロールしてる」と分かれた。ぼくは後者の意見。ヤマハがしたたかにゲームをスコアレスにしている、という印象。このままで行けばランポーレが先にバテるだろう。
後半。太鼓隊が選手の名前も呼ぶようになり、急にサポらしくなる。なんでも、ランポーレ関係者から飲み物の差し入れがあったのだそうだ。「我々は義勇軍ではない、傭兵だ」とは太鼓隊1名の談。試合はこちらも後半なかばに両チームがともにバテてしまいバタバタした展開ながらも決定機はランポーレに多く訪れるようになる。独走してGKと1対1をはずした時はスタンド全員で『ずっこけ』になってなってしまったが、後半ロスタイムに左サイドの角度のないところから劇的決勝弾でランポーレ先制。試合再開後10秒と立たずに笛が鳴ったのでラストプレーでのゴールと言ってもよかった。大喜びのランポーレ選手達。崩れ落ちて動けないヤマハの選手達。2年連続の決勝敗退は大きなショックだろう。ヤマハの誤算は相手がバテるのと自分達がバテるのが同じだったことか。
ランポーレ選手達がスタンド前までやって来て挨拶。成太には花束が渡され、監督の次に胴上げされた。トップリーグから県リーグまで経験した男。こういうサッカー選手の幕引きってのも、あっていい。ただ、ランポーレの今後を考えると、少々心配。心配になるくらい成太の存在感は傑出していたからだ。補強からチーム構築からキチンとやっていかないと。


帰宅して、録画しておいた三重テレビで放送された藤枝ネルソン×トヨタ蹴球団を視た。藤枝のスタメンFWの1人はなんと千葉県在住で、土曜日に仕事をして夜行バスで名古屋入りして強行出場していたとか、社会人サッカーの過酷な実態がわかったりして興味深い内容だったが、一番興味深かったのが、終了近くにアナ氏が藤枝ネルソンの監督の話として「これまで東海社会人に出た時は、資金面・クラブ運営面の問題もあり、選手に『勝たないでほしい』とお願いしていた」というコメントを紹介したことだ。過去に地域決勝でもあったと密かに言われている内容だが、こうしたコメントが公共の電波に乗って流れたのは極めて稀有なことではないか。そう考えると、試合終了後のネルソン選手のサバサバした感じも納得がいく。表現が間違っている可能性を承知で書けば「負け慣れている」感じがしたのだ。

もちろん、この大会では藤枝ネルソンは昇格を目指していたと思う。いくら技術が高くても、シュートを2本もわざとクロスバーに当ててはずすなんて出来るわけがない。監督の談話として「今回は、地域レベルでやれるかどうか、一度上がってみよう」というコメントも放送されていた。
しかし、実際に2日連続で藤枝ネルソンのサッカーを観て思うのは、東海2部に上がるにはまだ足りないモノがあって、それは決して藤枝ネルソンの“事情”によるものだけではないということだ。それは、ランポーレの中盤の底で君臨した高木成太のようなレジスタの不在であったり、スタミナの不足であったり、『泥臭くも勝ちに行く』という意識の不足であったり。「じゃあ上がろうか」で上がれるほど昇格の壁は軽いモノではない。それは、地域からJFLでも、都道府県から地域でも、同じことだ。
ただ、藤枝ネルソンのスキルフルなサッカーは、県レベルで埋めておくには惜しいのも事実。この長所を生かしつつ、「楽シンダモン勝チ」====ThisIsTheErrorMessege====ではない「試合に勝つサッカー」が構築出来るようになれば、間違いなく一皮むけるだろう。期待してます。

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