吉田鋳造総合研究所
鋳造所長雑文録
2006/08/21◆“Sの悲劇”2006『試す大地とその後日譚』
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神奈川県協会のサイトで、土曜日の天皇杯神奈川予選準々決勝の会場が変更になって、第1試合は10時から平塚馬入の天然芝第1面→第2試合は12時から天然芝第2面となったと知った時は喜んだわけだわさ。


で、堤防の階段に座って第1試合を観戦中。気になって隣の第2面をちらちら視るのだけど、試合の準備をする素振りがまったくない。ぼくは心配になって“無料試合のS”君にメールした。彼は関東リーグで第1面→第2面のハシゴ観戦====ThisIsTheErrorMessege====を経験している。
「たぶん大丈夫。自分の時も大移動がありましたから」
なんでも、彼がハシゴした時は第1試合終了後にゴールポストからベンチからテントからすべてを隣のピッチに移動させて第2試合が始まるという荒技が行われたのだとか。しかし、「期待7割不安3割で待たれよ」とのコメントを読んだ瞬間、不安が8割7分くらいを占めてしまう。なにせ、『CR冬のソナタ』で3回連続して単発当たりを引く====ThisIsTheErrorMessege====のが吉田鋳造のデフォルトなのである。果たして、第1試合が終わると次の試合の選手達は当たり前のようにそのままのベンチで準備を始め、もちろん管理席テントやゴールポストが動くこともなく、当たり前のように引き続き第1面で第2試合は始まったのである。くすすんくすすん。不幸だ。S君からも「心中お察しします」との慰めメールが来る。しかしその時には、この後にS君にこれを激しく上回る不幸が襲いかかるとは、ぼくも当人のS君も知るわけがない。


その頃、S君は。会社の夏休みを利用して北海道旅行中。そしてその締めに、土曜日に帯広で全社の北海道予選→日曜日に盛岡で天皇杯の岩手予選。盛岡の準決勝はBピッチ開催なのでどちらも未観戦という完璧なプランを立てていた。実際、帯広での観戦が終わるまではプランは完璧に運んでいた。行程が乱気流に巻き込まれるのは彼が帯広駅に戻ってからだ。
なんと、帯広14:53発の「スーパーおおぞら8号」が、大雨の影響でまだ到着してないどころか始発駅の釧路を出ていないどころか折り返し「Sおおぞら8号」になる特急がまだ釧路に到着すらしていないというのだ。
S君はこの「Sおおぞら8号」で南千歳に行き、そこから「S北斗」「S白鳥」と乗り継いでなんとか夜10時には青森のホテルに投宿の予定だったのだが、この計画は根こそぎ崩壊。帯広の出発をその後の「とかち」に振り替えたそうだが、そうなると札幌→青森は夜行急行「はまなす」で動くしかない。しかし夏休み中の土曜の夜、すでに寝台もカーペット車も満席で指定席座席車に乗るしかないというのだ。それでも彼は「はまなす」指定席を選んだ。盛岡南Bピッチを選んだ。うぐぅ、ピッチ原理主義恐るべし。ひとの事言えた立場かと怒るなかれ。もしぼくが同じ立場になったとして「はまなす」指定席利用の、まさに苦行と言える移動を選択しただろうか。
結局、S君は札幌でラーメンを食べた後にネットカフェで時間をつぶし、「はまなす」座席車で夜を明かしたのである。その夜は厚別公園でコンサ×『べ』の試合があったので観戦を勧めたのだが、山形サポの彼としてはどっちも勝ち点ゼロで終わって欲しいという立場のようで観戦はしなかった。


翌日の日曜日。彼は盛岡に向かっていた。天皇杯岩手県予選の準決勝。第1試合でグルージャと富士大学の試合がある。第2試合は社会人が出ないので、第1試合だけ観て帰路に就くとのこと。「体調はいまのところ大丈夫。帰りのやまびこ車中でどれだけ死ねるかだ」と、やはりピッチ原理主義者は未観戦ピッチのためなら死ねるのだなあと他人事のように感心していると、やがて彼から「先立つ不幸をお許しください」とのメールが。先立つ不幸…?

「天皇杯岩手準決勝、Aピッチで行われます」

………………………………………………。まさに言葉を失うとはこのことだ。S君によると、現地で手に入れた大会プログラムにも「準決勝はBピッチ」とちゃんと書いてあるのだそうだ。にもかかわらず、Aピッチで試合が行われる。Aピッチは彼もぼくも観戦済み。無理して「はまなす」指定席座席車に乗って苦行の移動をする必要などなかったのだ。彼は過去にも、厚別補助で行われるはずの道リーグを観に行ったらメイン陸上競技場でやっていたという壮大な裏を喰ったことがあるが、どうやらそういう星の下に生まれているらしい。
それでも、S君は大会プログラムで岩手教員に平聡====ThisIsTheErrorMessege====を見つけて「5mmほど前向きになった」と健気なメールを送って来て少々見直してしまった。ぼくなんか、もし同じ境遇で同じ情報を見つけても3オングストロームぐらいしか前向きになれないような気がする。S君は鶴隊が富士大に負けるところを観て帰路に就いた。おそらく徒労のあまり、その夜は泥のように眠ったことであろう。


かくして全国で天皇杯予選がクライマックス。昨年の地域決勝に出ている中で、佐川中国と雉と鶴が消えたのは確認できている。ルミノッソが消えた瞬間もこの眼で見た。社会人の実力がその程度だから、なのかはわからない。天皇杯は恐いねえ。

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