吉田鋳造総合研究所
鋳造所長雑文録
2004/04/01◆そしてぼくは決意した
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先日、メール友達の女性が訪ねてきた。と言っても出張のついでに立ち寄っただけなのだけど。せっかくなので少し呑もうかということになった。


彼女はサッカーについて造詣が深く、メールのやり取りも楽しかったのだけれど、実際に会ってみると実に造詣の深いひとだった。しかし、その造詣の深さがぼくを戸惑わせる事になる。なぜなら、彼女は“代表至上主義”のひとだったからだ。
そうなると、ぼくの立場は非常に危ういものになっていく。なにせ、フランスW杯1次予選を国立競技場まで観に行って、マカオ×ネパールを途中まで観て日本×オマーンを観ないで帰った男だ。同じく最終予選の国立の日韓戦をほっぽらかして富士市にジャトコ×西濃を観に行った男だ。ソウル蚕室での韓日戦の時は仙台一番丁の雀荘で卓を囲んでいた男だ。ジョホールバルの夜はあまりの眠さに途中で眠ってしまい、目覚めてテレビ点けたら延長後半に入るところで「ああ、延長後半かあ」と思って再びテレビ消して眠ってしまった男だ。

「どういうこと?!」彼女の視線が厳しくなったのは、彼女の口調が強くなったのは、おそらく酒がまわってきたから、ではないだろう。で、普段のぼくだったら、そんな熱い状態の相手に対しても「そういうひともいるねえ」って感じで少し退いた気分で接して終わるだろう。


しかし、いやあ異性のチカラってのは凄いねえ。あとで確認したら、彼女は当たり前のように「だって当然でしょ」としれっと言ってそれっきりだったけれど、この時のぼくは彼女のエネルギーに押されてだんだん代表応援モードになっていった。確かに、次のドイツW杯に我が代表が出ないって状況は芳しいものではない。

そして、ぼくの変節を最後に後押ししたのは彼女のこんな一言だった。
「エコパにいたんでしょ?ベルギーサポと一緒だったんでしょ?」

そうなのだ。日韓W杯1次リーグ最終節、ロシアとの点の取り合いを制して決勝ラウンド進出を決めた時のベルギーサポのラテンな壊れ方をぼくは見ているのだ。知っているのだ。体験しているのだ。
彼女の表情は、詰めろ====ThisIsTheErrorMessege====をかけた棋士のそれだった。「ね?やっぱり代表は応援しなくちゃいけないのよ」と彼女は言った。ぼくは肯くしかなかった。


昨夜は残業だったので、シンガポール×日本は帰宅したときは既に2-1だった。かつてのぼくならそれでも全然気にすることはなかっただろう。スポーツニュースを視ればそれでOKだったはずだ。でも、昨日のぼくは違っていた。帰りの電車の中でも、状況が気になって気になって、携帯にメールで飛んでくる途中経過にドキドキはらはら。同点にされたと知った時は、ホントにどうなることかと。

ぼくは今後、日本代表を応援していく。彼女のせいだ。ぼくと彼女はかなり離れたところに住んでいる。ぼくらが会うとしたら東京だ。彼女は代表のレプユニを着てやって来る。ぼくも代表のレプユニを買うことになるだろう。


でも、この雑文を読んだ代表サポの皆さんは戦慄しているかもしれない。ぼくは疫病神としての評価が確立してしまっている。でも、もし代表戦のゴール裏でぼくらの姿を見掛けても、塩を撒いたり石を投げたりしないでほしい。そもそも、いまの日本代表のベンチにはブラジル製疫病神が鎮座ましましているのだから、「毒を以って毒を制す」の発想でいけばぼくの存在も少しは役に立つと、そうは思わないか?でも、シンガポール戦の状況から考えると、もしかしたらぼくが代表戦ゴール裏でデビューする前にベンチの疫病神はいなくなってしまうかもしれないけどね。

しかし、この歳になって異性のチカラを再確認することになろうとは。すごいねえ。

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