吉田鋳造総合研究所
鋳造所長雑文録
2004/03/08◆この週末のこと(1)~星の寝台急行~
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昔むかし、ぼくが大学を出たてでコンピュータ会社でプログラマーみたいな仕事をしていた頃。終電まで残業は当たり前で、当時春日井に住んでいたぼくは大抵はホームで缶ビールを呑みながら中央線の最終・高蔵寺行の到着を待つことが多かった。ベンチに腰掛けてビールをかっくらっていると、離れたホームに列車の到着案内放送が流れる。

「特急 あさかぜ 3号 下関行が 到着します」。

停車した寝台列車の窓のほとんどはカーテンで閉ざされているが、中には車内が見える窓もある。乗客は窓辺に腰掛けてビールを呑んでいる。そんな彼を視ながらぼくもビールを呑んでいる。ぼくらは同じことをしているのだけど、夜汽車の中とぼくのいるホームとでは違う時間軸が通っている。そう見えた。カキャン!ゆっくりと動き出す寝台列車のテールランプが見えなくなってしばらくして、高蔵寺行の終電車がやって来る。そんな生活を続けていた。


先週は高知まで単車転がしてサッカー&うどんツアーをやって来て、今週はまた移動。ウチの研究所とは長いつきあいの佐藤淳一画伯====ThisIsTheErrorMessege====が今年も個展を開くので東京まで鑑賞に行ってきたという次第。この土曜日は午前中は仕事だったので、午後からの「こだぷら」を手配して東へ向かう。
車内でNumber誌を読んだ。Jリーグ開幕特集という割にはチーム紹介的な記事があんまりないのはなぜかいな。そんな中、やはりスギヤマシゲキ大先生様のコラムは光ってるねえ。ヒデがシドニー五輪でPKはずしたことと平山の進路選択がどう結びつくのか読んでて全然わからない。とにかくこのひとの判断基準となるのはチャンピオンズリーグで他には何もない。いやあ、このひとの視点はぶれない。ホントにぶれない。一貫してまったくぶれずにトンチンカンな方を向いている。それでメシが喰えるんだからさすがという他ない。ところで、エミレーツでの五輪予選のレバノン戦で、平山が競り合ってスペースに落としたボールにタツヤが走り込んでいくシーンなんか、ぼくにはナイアル・クイン====ThisIsTheErrorMessege====ロビー・キーン====ThisIsTheErrorMessege====のコンビにしか見えなかったんだけど、アイルランド代表のサッカーを「悪臭漂う」と評価された大先生様は鼻つまんでたんだろうか。

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ま、そんな感じで適当に読み散らかしながら東京着。バスで永代橋近くで行われていた画伯の個展会場へ。昨年より見せ方がおとなしくなったねと言ったら「昨年は原酒を出したから今回はカクテルにした」とのこと。なるほど。個展会場から見える永代橋と隅田川の光景がまたいいのよこれが。個展の時間が終わり、集まってきた鉄研連中と門前仲町でぶくぶくと呑む。10時をまわったあたりまで呑んだところでお開き。ぼくは東京駅へ。この夜は“銀河”に乗るのだ。


東京や大阪に住んでいるひとなら「それがどうした」という話だろうが、東海地区に住んでいると寝台列車ってほとんど利用する機会がない。目にすることもない。「ちくま」====ThisIsTheErrorMessege====が電車化されてからは本当に縁のないものになった。
寝台列車の立場もずいぶん変わった。いまは「みずほ」も「明星」も「ゆうづる」もいないんでしょ?寝台列車は時間効率から快適性を求めるものになり、どんどん豪華になってB寝台でも個室がある程度当たり前のこの時代に、プルマンタイプ====ThisIsTheErrorMessege====のA寝台をひきずっているのは「銀河」と「日本海」1往復と「きたぐに」だけ。ぼくは翌日は京都でサッカーを観ることになっている。この機会を逃してなんとする!

鉄研連中が見送りに来てくれた。差し入れは「銀河鉄道ビール」。さすがだ。A寝台にもぐり込む。さすがに広い。蒲田で京浜東北線を追い抜く。電車に乗っている人達と目が合う。ぼくは彼らと違う時間軸の中にいるのだろうか。横浜まではなんとか起きていたのだけど、当直の疲れと門前仲町の酒のせいで、ここで沈没。5時過ぎに一度目が覚めたらちょうど西岐阜を通過したところ、大垣では名古屋方面の始発電車がもう扉を開けていた。再び眠ってしまい、ちゃんと目覚めたときには新大阪到着の車内放送だった。あわてて服を着て下車の準備。朝7時過ぎの大阪は、見慣れたいつもの大阪だった。夜汽車の中の特殊な時間軸は、やはり夜汽車の中だけで有効らしい。

(つづく)

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