吉田鋳造総合研究所
鋳造所長雑文録
2003/09/03◆富山におけるクラシコ。
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天皇杯富山県代表決定戦。YKK対アローズ北陸。8年連続このカードだそうだ。9年前は違うカードだったというのなら驚くほかないが、実はこれ、9年前までは天皇杯代表は県レベルではなく地域レベルの戦いだったというだけの話。つまり富山県予選決勝は最初からずーっとこのカードだったというわけだ。まさにクラシコと呼んでいい戦い。北信越リーグを飛び出したのはアローズの方が先====ThisIsTheErrorMessege====だが、近年のJFLにおける成績ではYKKがアローズのかなり上位にいる。しかし、だからと言って直接対決が順位通りになるとは限らないってのはマンチェスターなど世界各地のダービーでおなじみ。しかもカップ戦の県代表決定戦となれば、まさにどうなるかはわからない。以前から観たいカードだったのだが、今年ようやく観戦の機会を得た。


前日に金沢で萌え萌えらと深い深い酒を嗜んで、翌日は雨が降ったり止んだりのあいにくの天気。爆睡状態の萌え萌え男をそのままにバスで湯涌温泉に行ってじっくりと汗とアルコールを流し、金沢から富山へ。会場の岩瀬スポーツ公園は北陸線・東富山と富山港線・大広田の中間ぐらいにある。富山港線の接続が悪いので東富山へ。岩瀬に来るのは3回目だが、過去2回はクルマとバイク。駅からどれくらい歩くのかわからない。駅員氏に訊ねると「ぼく行きますよ、一緒に行きましょう」と一緒の電車に乗っていたバルサのシャツを着た兄さんに誘われた。
彼は福光在住のYKKサポ。地元のチームを精一杯応援しようという気概に満ちていた。やはりアローズとの対決は負けられないという。「サポと言っても数人のささやかなものですけどね」と笑う。ザスパみたいに大規模なサポートが出来れば、とも。ぼくがザスパのサポは湯あみの板を持ち込んで応援する、地域色の強い応援っていいよねという話をしたところ、大いにうなずいていた。


会場に着いたのは1時間前。それでも屋根の下の席はほぼ埋まっていた。埋めていたのは女子サッカー選手。どうやら午前中に女子サッカーの試合があったらしい。
実はYKKを観るのは久しぶりで、知っている選手と言えばFWの長谷川と元アビスパの牛鼻くらい。元サンガの松川はベンチスタート。一方のアローズには神戸から石橋がローン加入。場内放送でフォーメーションを聴いた時にはよーた====ThisIsTheErrorMessege====の1TOPだったのでびっくりしたけど、試合が始まると石橋も前線に出ての4-4-2。

前半、左からのクロスをヘッドで折り返したところをゴール前に詰めていた牛鼻が押し込んでYKKが先制。YKKがリードしたことで、試合の結果はある程度見えたような気がした。このまま粛々と1-0でYKKが勝つのだろう。
ところが、先制されたことでそれまでは後ろの方でバランス取りながら守備要員していた川上が攻撃に絡むようになってアローズにもチャンスが生まれてくる。やっぱりこのチームは川上が前にいないと攻撃が作れないのだ。そして左サイドからのFK。ポストに当たったボールはそのままゴール正面に跳ね返り、そこにいたのが川上だ。同点。やはり、ただでは終わらない。
後半になるとアローズの方が攻めている時間が長くなる。しかし今日はよーたがいまいち。YKKのDFに何度もつぶされてしまう。そこで選手交代、よーた→浅島。アローズを支えるストライカーの登場だ。ところがどっこい、浅島のスピード不足はもう「はうぅ」と言った感じ。一方のYKKは上背を活かしてあくまで空中戦を挑むもゴールには至らず、局面を打開すべく松川を投入するものの、結局は延長戦でも決着がつかずにPK戦になった。
こうなれば運なのだが、それにしてもYKKのPKが1本も入らないとはどうしたことだ。アローズも1本止められたものの4本目を浅島がきっちり決めて予選勝ち抜け。バタバタした試合だったかもしれない、それでも意地と意地のぶつかりあいはしっかり堪能できた。やはりこのカードは富山におけるクラシコなんだ。


富山からの帰りは特急ひだ。始発なので自由席で楽勝だ。列に並んでいると、ホームの反対側に停車中の電車に乗ろうとしていたのは、東富山で会ったバルサシャツのYKKサポの兄さんだった。「言葉がないっす」と彼は本当に言葉を絞り出すように言った。これ以上ないというくらい彼はへこんでいた。

正直に言おう、ぼくは嬉しかった。彼がへこんでいることが、ではない。ライバルに負けてここまでへこむということは、それだけそのチームを愛しているということだ。そういうサポが富山にはいる。彼に会えたことで、富山に来てよかったという思いは確信になった。前夜の酒が深かったので「ひだ」の車中では呑まなかったが、もし体調がOKだったらさぞうまい酒が呑めたことだろう。

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