吉田鋳造総合研究所
鋳造所長雑文録
2002/06/16◆ぼくはこんなにも韓日W杯を。(2)
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W杯のチケットで真っ先に手配したのが実は6/14の静岡の試合だった。計算の結果である。

1.同日同時刻に日本代表の試合があるので確実に競争率が低い。
2.開催国の日本が第1シードに入るのは決定だから、中堅どころ同士の対戦になる可能性が高い。ゲームとして面白いだろう。しかも第3節だから決勝Tを賭けた戦いになるかも。

というわけでこの試合を第1ターゲットにしたのだがこれが大正解。ベルギーvsロシア、しかも決勝Tを賭けた直接対決となった。久々に自分の眼力を誉めたい気分になった。この眼力が競馬や「ひろひろ」で生かされるともう少し人生に余裕が生まれるのだが。


カネがあるわけではないのでJR普通列車で浜松へ。車内放送では静岡方面の接続は10分待ち。ところが浜松駅に着くと反対側のホームに「普通」とだけ行先幕を出した電車が停まっている。どう視ても臨時列車だ。おいJRお前らやる気あんのか?浜松を出る段階では普通の混雑だったが、磐田や袋井で結構乗ってきて、愛野に着いた時はラッシュアワー並になった。自動改札は開放状態にしてあって乗車券は手回収。いやあ実にJR東海だ、営業面にはマンパワーをかける。

愛野駅南口広場には屋台が出ていて軽食を売っていてヒトやまのクロだかり。外国人にもわかるように英語のコメントつき。しかしあまり外国人の姿は見ない。途中で缶ビールを買って呑みながらタラタラと歩く。入場券確認の第1ゲート前まででロング缶1本をカラにしたのでちょっとヘロヘロになった。インテグレータ====ThisIsTheErrorMessege====に乗ってずるずると坂を上ると、NIFTYの知人2名が待っていた。ひとりは韓国に行って韓国の初勝利とアメリカvsポルトガルを観てきたそうだ。USAファンの彼としては感無量といったところだろう。

貸切バスの駐車場の方からロシアサポがずらずらと歩いてくる。やはり数が多い。海を隔てた隣の国なのだから当然か。中にはCCCP====ThisIsTheErrorMessege====と書かれたアイスホッケーのユニを着てくる猛者もいてちょっと感動。しかしベルギーサポの数が少ない。実に少ない。ぼくの席はベルギー側ゴール裏ということが判明し、今日はベルギーに付くことを決意。飛行機マニアたろう君の話だとベルギーの女の子ってとんでもなくかわいいという話だったが、娘さんの姿はなく大男ばかりだ。

ロシア側ゴール裏だという知人と別れ、中に。韓国の時は「外国人」の通路から入れたのでラクだったが、ここではそうもいかない。しかしチェックは甘い。身分証明書の提示もなにもない。売店ではビールは1人1回1杯までと書いてあったけど、売り場をハシゴすれば関係ないじゃん。ベルギーサポの野郎どもが戦闘前に気合いを注入すべくビール売場前にたむろしていた。しかしデカいな、みんな。ぼくの席は本当にゴールの真裏だった。

試合は白熱した好ゲーム。さすがに欧州代表として16強を賭けた試合だけのことはある。スタンドの応援は7割がロシアではないか?「ろ・し・あ!」の大合唱。ベルギーサポも応戦するが、周囲の日本人も少しはサポートするもののパワーに乏しい。ベルギーが開始早々にFKを直接叩き込んで先制するが、これで安心は出来ないね、勝負は後半だという感じで前半終了。ぼくのまわりは大勢がラジオでチュニジアvs日本の中継を聴いていたけど何の反応もなかったのでこちらもスコアレスなんだろうな。

後半開始早々、目の前の試合と関係なしに周囲がざわめき、いきなりの「にっぽん、ちゃちゃちゃ」。隣に座っていたカップルから日本の先制ゴールを知らされる。これでみんな安心して目の前の試合に意識を向けることが出来たようだ。ロシアは、W杯開幕前から日本のメディアに「でく」とボロッかすに叩かれていたベッシャスニヒのゴールで追いつき、いよいよ白熱してくる。やがて再び周囲がざわめき、日本が加点したことがわかった。長居は2-0。これは間違いなく1位通過だ。というわけで、ぼくも含めて周囲はぞろぞろとベルギーサポに義勇軍参戦。するとどうだろう。立て続けにベルギーが得点し、周囲は「一緒に決勝トーナメントに行こう!」と喜びの大爆発となってしまった。ベルギーサポが「にっぽん、ちゃちゃちゃ」をすれば日本人も「べるじうむ、ちゃちゃちゃ」で返す。逆に追いつかないと道がないロシアサポは沈黙してしまった。長居の方が先に試合が終わり、もうゴール裏は友好ムード一色だ。

rn001_48a.jpg▲ベルギーGL突破の瞬間。

エコパも試合終了。みんなして歌うわ踊るわ。ラテンのノリだ。しかし、上海で中国のW杯初出場決定に遭遇したときも思ったのだけど、喜びの感情の素直な爆発というのは観ていてとても気分がいい。もちろん日本も勝ち上がって自分にも余裕があるからなのだけど。ベルギーの大男達とハイタッチを繰り返し、一緒に歌を歌い、30分もスタンドに居残ってしまった。スタンドを出てからも、ベルギー国旗を纏った野郎を見つけるとこちらから声をかけた。Congratulations!向こうもThank You! You Too!そしてまたハイタッチ。さいたまの試合で勉強したのか「やなーぎさーわっ♪」と歌ってくれる白ヒゲのおじさんもいた。本当に、いいものを観た。静岡に行ってよかった。


フランスにアルゼンチンにポルトガルが早々とお帰り。イタリアはギリギリで生き残った。コンディショニングというものがいかに重要なファクターだったかを知らしめる結果に。しかし津名町長が「ほれ見ぃ、我々がイングランドの練習非公開に協力したから彼らは残ったのだ。どこかの村をキャンプにした国は選手と地元民が交流したけど敗退したじゃないか」みたいなコメントを残したそうだがそれは違うと思うぞ。彼らが負けたのは選手と地元民が交流したからではなくて到着が遅れたからなんじゃないのか?あんまり調子こくのもいかがなものかと。

そもそも各国とも敗退の理由なんか実は1つしかない。それは「勝ち点が取れなかったから」という当たり前のことで、他にはないのだ。サッカーというのは相手よりたくさんゴールを入れた方が勝つルールになっていて、もし同点の場合も審判が旗を揚げて決めるなんて「優勢勝ち」のようなルールはない。競馬の世界ではよくこんな言葉が使われる。「強い馬が勝つんじゃない。勝った馬が強いんだ」

フランスやアルゼンチンの選手が残していった「これがサッカーだ」という一言には、因果律では伝えきれないものがあるという意味が含まれている。そして、だからこそサッカーは面白いのだ、とぼくは思う。

ちなみに勝ち残り16強の中で鋳造イチ押しはアイルランド。出場できたことに誇りにし、試合を愉しみつつも力強く自分達の代表を支え続ける。そして選手もその支えに応えようと懸命にプレーする。今後の日本代表とサポーターに対する一つの模範解答例のような気がするのだけど、ほめ過ぎかな。

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