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tour:きまぐれ信州(後)
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特に用事はないものの岐阜に戻るつもりだった。再びガコガコ寝ている役人をほったらかしに出発。朝の6時半。さあどのルートで帰るか、迷いつつ高山市内のコンビニ駐車場で地図を見る。ところが、東の方の空がどんどん晴れて行くではないか。まだ休みは3日ある。クソ暑い岐阜に戻ってどうするのか。ここで発作を決意。東へ、行けるだけ東に行ってみよう。

安房峠は昨日越えたので今日はトンネルでサクサク通過する。やっぱり圧倒的に早い。沢渡の駐車場に着いたのは7時過ぎだった。“温泉営業中”とのことで寄ってみると、まだ男湯は準備できていないとのこと。誰もいないし、女湯だったら入れるよとの一言に甘えてしまう。女湯だからといって誰もいなければさしたる違いはない。脱衣場に赤ん坊用の設備があるのと、外から見られることを考慮して多少展望を悪くしているくらい。そろそろ上高地に向けたクルマが上がってくる頃だ。さらに東へ。松電の新島々に8時。しかし8時5分発の上高地行バスはガラガラだ。連休の谷間の平日ということもあるが、やはり電車とバスを乗り継いでという時代は終わりなのだろうか。


松本市街地をバイパスで交わし、三才峠を一気に抜けて鹿教湯に着いた。ここには温泉街のはずれに地元住民用の公衆浴場がある。地元民以外は50円だか100円だかを料金箱に入れる。気の利いた設備など何もない。これがまたいい。お湯はかなり熱かった。さらに東へ進んでもいいのだが、ここまで来たんだからと別所温泉に行く。丸窓の渋い電車は駅構内に放置されていた。ここでも外湯。なりは綺麗でその分高い。さすがに風呂に入ってばかりでカラダも弛緩してしまう。ここで少し休憩。

まだ10時半、これはまだ行ける。上田のバイパス沿いのラーメン屋で早い昼飯を喰い、北に向かう。国道沿いに残っていた真田駅の跡は見事に更地になっていた。近所の方に話を聞くと、老朽化が激しく危険になったので壊したとのこと。致し方あるまい。そのまま北上、鳥居峠を越えた。これより群馬県。嬬恋のキャベツ畑を楽しみ、一気に草津温泉だ。さすがにすごい混雑。しかし中心街のど真ん中にある風呂場は閑散としていた。なぜかな。入ってみると、これが熱いのなんの。早々に退散。温泉街は人で溢れていたし。


ここから白根山を経由して渋峠へ。眺めはいいのだろうけど、高所恐怖症気味の私には少々つらい道程だった。白根火山を通過してさらに進むと、ついに国道最高地点の渋峠だ。かつては長野県の麦草峠が最高地点だと言われており、そちらには最高地点の掲示もあったのだが、渋峠にはそんな飾りは一切ない。乗鞍と同じく、県境の味気ない表示が立つだけだ。ここでしばし休憩。ここでも携帯が使えた。草津からゲロ袋オハユニ氏に打ったメールの返事が来ている。曰く草津まで行ったのなら、もう信州秋山郷しかないでしょう。わっしょいわっしょい。彼とのつきあいは長い。どうすれば私を操れるか熟知しているのだ。渋峠から湯田中に向けて一気に降りる。蓮池から奥志賀林道に入った。ここをひたすら北上すれば野沢温泉に着くはず、そこから東に向かえばなんとか秋山郷にもたどり着けよう、と気軽に進んだ。林道とはいえ舗装されていて文句はないのだがなにせ長い!全長が60km近くあるというではないか。かなりげんなりしてしまい、野沢で日和ってやめてしまうことも真剣に考え始めたが、10kmも走らないうちに三叉路に突き当たった。

←野沢温泉 / 秋山郷→

あーあ。これは呼ばれていると考えて差し支えあるまい。右に曲がった道は林道秋山線。そのまま林道を走り続けてたどり着いたのは秋山郷の南端・切明温泉だった。まさに秘境。ここでまた風呂に入る。最高だ。


時間もまもなく4時近く、陽もだいぶ傾いてきて、そろそろ帰りのことも考えないといけない。ここからひたすら北上する。他に選択の余地はない。そもそも北からの1本ルートしかないところで、だから秘境なのだ。谷筋をただただ北に向かって走ると、ついに新潟県の県境を越えた。まさかこのバイクで越後に行くことになろうとは。津南駅に5時。ここで少しだけ休憩して、国道を西に走る。森宮野原の県境を越えて、再び長野県。ゲロ袋オハユニ氏が立ち寄ってなぜか印象に残っているという森宮野原駅前のラーメン屋に私も立ち寄り、夕刻なので晩飯にした。スタミナラーメンの大盛り。本当に普通の中華料理屋だった。大相撲の13日目、曙の優勝をTVで確認して、野沢に向けて走る。もうだいぶ暗くなってきたが、ここまで来て野沢に行かない手はない。野沢で必ず寄る真湯で最後の温泉。明日の昼過ぎには岐阜に戻っていたいので、走れるところまで走ることにする。長野市街地は渋滞するだろうと考えて避け、須坂の方を通ることにした。屋代駅前のホテルに予約を入れ、到着したのが9時近く。あまりの疲れで瞬間で眠ってしまった。


翌朝も早起き。夜明けの姨捨駅を見ておきたかったのだ。実は屋代と姨捨は近い。バイクで駆け上がるともいうそこは駅だった。ここから篠ノ井線沿いに松本まで走った。来るのと同じルートでは芸がないし、木曽谷を走るのもつまらないなあということで野麦峠再訪。天気もよかったので気分良く走れたが、峠は相変わらずパッとしないものだった。あとは素直に高山からせせらぎを南下して郡上八幡へ。坂本峠のトンネルを過ぎると、そこは冗談のように暑い。私が信州を離れている間、美濃はずーっとこの暑さだったらしい。ああ、夏の信州は気持ちよかったなあ、とクソ蒸し暑い岐阜の街を走りながら回想に耽るのだった。

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